太陽光不足が「がん」や「うつ」を引き起こす?太陽光と「ヒトの健康」の関係とは

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新型コロナウイルスの感染拡大以降、すっかり「新しい働き方のカタチ」として浸透したリモートワーク。
当初は「ウイルスだけでなく満員電車も回避できてラッキー!」という声も多かったこのリモートワークですが、大々的な普及から1年ほど経過した今、リモートワークによって心身の調子を崩す人が増えてきています。
その背景には、「オフィスと違ってオンオフの切り替えが難しい」「オフィスにあるような立派な椅子がなくてお尻が痛い」など様々な理由がありますが、中でも大きな理由として挙げられるのが「太陽光不足」です。
この太陽光不足があまりにも続くと、場合によっては「がん」や「うつ病」などの疾患を招いてしまうかもしれません。
リモートワークによる体調不良をなるべく防ぐべく、今回は「太陽光不足が人体に与える影響」、そして「リモートワークでも太陽光不足にならないようにするための対策」などについて紹介していきます。

太陽光が人の健康に必要な理由

骨を作るのに必要なビタミンDを作るから

以前「太陽光で日焼けするのはなぜ?冬でも日焼けするの?理由や対策をチェック!」というコラムでも触れましたが、太陽光に含まれる紫外線は大きく分けて「A波(UV-A)」「B波(UV-B)」「C波(UV-C)」の3種類に分けることができ、その中でもA波とB波は浴び過ぎると日焼けやシミの原因になると言われています。
しかし、それは紫外線の強い真夏日などに長時間浴び続けた場合の話であり、B波に関しては適度に浴びることで、かえって健康に良い影響をもたらしてくれることが分かっています。

というのも、B波には人体に必要な「ビタミンD」の中でも特に働き者の「活性型ビタミンD3」を産生してくれる力があるからです。
ビタミンDは食物からも摂取することができますが、最も大きな供給源は太陽光だと言われています。
B波が体内でビタミンDを作り出すまでの流れは、以下になります。

➀紫外線B波が肌に当たり「プレビタミンD3」が生まれる
②体温によって「プレビタミンD3」が「ビタミンD3」に変わる

B波によって生まれたビタミンD3は、ビタミンD結合タンパク質によって肝臓まで運ばれ、骨を作るカルシウムの吸収を助ける働きをしてくれます。

自律神経を整える「セロトニン」を生むから

太陽光はビタミンD3の産生の他に、人の精神面に大きな影響を与える「セロトニン」という神経伝達物質の分泌にも一役買っています。
セロトニンは日ごろから朝日を浴びていたり、こまめに運動をしていると分泌されることが分かっています。
別名「幸せホルモン」とも呼ばれる通り、セロトニンが十分に分泌されていると、睡眠の質が向上する、ストレスを貯め込みにくくなるなどのメリットがあります。

太陽光不足が健康にもたらすリスク

太陽光が人体に必要不可欠な「ビタミンD3」と「セロトニン」を生み出すことは分かりましたが、太陽光不足によってこの2つが十分に生み出されなくなると、人体にはどのような影響が出てくるのでしょうか。
ここでは、太陽光不足が健康にもたらすリスクについて見ていきましょう。

骨密度の低下

前述したように、ビタミンD3は骨を作るためのカルシウムの吸収を助ける力がある他に、カルシウム不足の時には体内の尿からカルシウムを再吸収するための働きを行ってくれます。
そのため、ビタミンD3が不足することはカルシウムの不足にも繋がり、これが骨密度の低下を招いてしまう原因になります。

骨密度の低下は「骨粗しょう症」を引き起こすおそれがあり、もし骨粗しょう症になると、背中や腰が痛んで起き上がるのも億劫になったり、クシャミや転倒といった些細なことがきっかけで骨折してしまうおそれがあります。

がん発症リスクの向上

アメリカで行われた研究によると、ビタミンDが不足している人は不足していない人に比べ、大腸がんの発症リスクが2倍近く高いということが分かっています。
また同じくアメリカで行われた別の研究では、ビタミンD値が低い、あるいは中程度の人はビタミンD値が高い人に比べ、大腸がんで死亡するリスクが約75%高いということも報告されています。

大腸がんに限らず、ビタミンDの不足は食道がん、口腔がん、すい臓がん、乳がんなどの発症リスクも高めるおそれがあり、またガンに限らず白血病の発症リスクも高める可能性があると言われています。

うつ病の発症

「幸せホルモン」であるセロトニンが不足すると、「イライラする」「慢性的にストレスを感じる」「疲れやすくなる」「やる気が起きなくなる」「人と会いたくなくなる」などの症状が出やすくなります。
さらにこれらの症状が悪化すると、うつ病や不眠症などを引き起こす可能性があります。
その他、パニック障害や不安障害などの精神疾患も、セロトニン不足が一因となって発症するケースもあることが分かっています。

元々、他の季節に比べて日照時間の少ない冬に発症する「冬季うつ病(季節性情動障害)」と呼ばれるものはありましたが、現代人には屋内で仕事や趣味の活動を行う人が増えていることから、近年では季節を問わず太陽光不足によってうつ病を発症する人が増える傾向にあると言われています。
加えて、新型コロナウイルス拡大以降の外出自粛やリモートワークがセロトニン不足に拍車をかけた面もあると考えられています。

太陽光不足を補う、または解消する方法

朝起きたら15分~30分程度朝日を浴びる

セロトニンを分泌させるためには、何も日中ずっと太陽光を浴びていなければいけないわけではなく、さらに言うと大切なのは「浴びている時間の長さ」よりも「浴びる時間帯」です。
その上で、太陽光を浴びるのに最も効果的なタイミングだと考えられているのは「午前中(できれば10時まで)」だと言われています。
セロトニン不足にならないためには、朝のうちに起床して15~30分程度日光浴を行う習慣をつけると良いでしょう。

ちなみにこれは雨の日でも効果があるため、あまりにも悪天候の日以外はできるだけ行うことをお勧めします。

適度な運動を習慣化する

通常の出勤時であれば、駅までの道のりやランチの買い出しなどで多かれ少なかれ体を動かすタイミングはあります。
しかしリモートワークが続くと、どうしても長時間自室に籠りきりになってしまいますよね。
これではビタミンD3やセロトニン不足に留まらず、肥満になってしまうリスクも上がってしまいます。

そのためリモートワーク中は、ある程度ひと段落したタイミングでストレッチや散歩など、比較的軽い運動を行うことをお勧めします。
そうすることで肥満予防になるだけでなく、太陽光の力でビタミンD3を作り出すことができます。

食物でビタミンDやセロトニンを補う

太陽光不足によって欠乏したビタミンDやセロトニンは、ある程度は食物で補うことが可能です。
まず、ビタミンDが豊富に含まれている食物は、以下になります。

・魚介類(メカジキ、サーモン、ツナ缶、オイルサーディンなど)
・きのこ類(マッシュルーム、マイタケなど)
・乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど)
・牛のレバー
・卵

続いて、セロトニンの分泌を促す「トリプトファン」が豊富に含まれている食物は、以下になります。
・大豆製品(味噌、納豆、豆腐、しょう油など)
・乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズなど)
・米
・バナナ
・ピーナッツ
・ごま
・卵

ビタミンDもセロトニンも、上記のうちどれか一種類だけを毎日大量に摂取すれば良いという訳ではなく、日々の食事の中で主食、主菜、副菜といったようにバランスよく取り入れることが大切です。
もし「毎日忙しくてそこまで気を配れない」という場合は、手軽にサプリメントで摂取してみても良いかもしれません。

まとめ

今回は、太陽光不足が引き起こす様々なリスクについて見ていきましたが、普段は特別意識することの少ない太陽光が人の体にとってどれだけ重要な存在かが分かったのではないでしょうか。
外出自粛が続く今だからこそ、日光浴の時間や「家の周りを少しだけ散歩する」などのちょっとした運動の時間を大切にしたいですね。

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