ウクライナ侵攻は食糧危機を招く?食料自給率40%以下の日本が受ける影響とは

グローバル

2021年2月24日にロシアのプーチン大統領がウクライナへの軍事作戦を開始してから、国際社会では依然として緊迫した状況が続いています。
ヨーロッパ諸国、アメリカ、日本を含む西側諸国はロシアに対し、経済制裁という形で今回のウクライナ侵攻を批判していますが、ロシアはいまだ強硬姿勢を崩しておらず、終結の目処は経っていません。
今回の戦争を望んでいないウクライナ国民、そしてロシア国民のためにも、一刻も早く停戦が実現して欲しいものです。

そして、今回のウクライナ侵攻とそれに伴うロシアへの経済制裁は、巡り巡って世界経済にも影響を及ぼすと考えられており、そのうちのひとつとして「世界的な食料危機が起こるのではないか」と懸念されています。
日本では近年、食料不足どころかフードロス(食料廃棄)が問題になっているため、食料危機と言われてもいまいちピンとこないかもしれません。
しかし、実は日本の食料自給率はここ数年40%前後と低い水準にとどまっており(※カロリーベースの場合)、実に食料の半分を輸入に頼っているのが現状です。
つまり国際情勢によっては、食料輸入がストップし、食料危機に陥る可能性も十分にあるのです。

そこで今回は、ウクライナ侵攻が世界そして日本の食料事情に与える影響や、日本の食料自給率を上げるための対策などについて解説していきます。

ウクライナとロシアは「世界有数の穀物大国」

ウクライナとロシアは、共に世界の穀物生産量ランキング上位10カ国に入る「世界有数の穀物大国」です。
ウクライナからロシア南部には「チュノーゼム」と呼ばれる肥沃な黒土地帯が広がっており、それが潤沢な穀物生産の源となっています。
ロシアではかつてライ麦の生産が盛んでしたが、近年では穀物生産の大半が小麦にシフトしています。
2021年には約7700万トンの小麦を生産し、そのうちの半分をトルコやエジプトに輸出しています。

一方、ウクライナでは小麦にも増して、トウモロコシの生産が最も盛んです。
2021年には約4000万トンのトウモロコシを生産し、そのうち90%近くを中国、オランダ、スペイン、イランなどに輸出しています。 ちなみに同じ年の小麦生産量は約3200万トンで、そのうち約70%を輸出しています。
その他、両国はヒマワリ油の輸出国としても知られています。

また、ロシア、そしてロシアの同盟国であるベラルーシは、農業用肥料の原料として使われる塩化カリウムの主要輸出国で、両国の塩化カリウム生産量は世界全体の約40%を占めています。

ウクライナ侵攻が世界の食糧状況に与える影響

前述したように、ロシアとウクライナは多くの国に穀物を輸出しているため、侵攻が長期化すればするほど、生産と輸出の両方に大きな影響が生じると考えられています。
塩化カリウムにおいても供給不足が懸念されており、今回の侵攻が長期化すれば、世界各地のサプライチェーンが混乱に陥ると予想されています。
ウクライナではまもなく春の作付け時期となりますが、戦況によっては例年通り行えるとは限らず、世界の食糧状況に大きな打撃を与えるおそれがあります。

また、ウクライナで生産された農作物の大半は黒海経由で船舶輸出されますが、2022年6月現在はロシア海軍の妨害によって、ほとんどの港が機能していない状況にあります。
これに対しウクライナ政府は同年3月13日、「鉄道を利用して輸出責任を果たす」と発表しましたが、すべての輸出分を賄うには限界があり、依然として危機的状況であることには変わりありません。

そして意外と知られていませんが、実は原油価格と穀物価格は連動しています。
これは、原油の代替品であるエタノールの原料にトウモロコシが使われていることが背景にあります。
つまり今回の侵攻の影響によって原油価格が上がると、トウモロコシの価格も連動して上がり、その代替品である小麦の価格上がる…といった価格高騰の連鎖が起きてしまうのです。

なおロシア政府は3月14日、西側諸国からの経済制裁に対する国内の食糧自給強化のため、ベラルーシなどの近隣諸国に対する穀物輸出を制限することを発表しています。

日本が受ける影響は?

日本は小麦の約90%を輸入に依存していますが、主な輸入先はアメリカ、カナダ、オーストラリアとなっているため、今回の侵攻によって小麦輸入自体に影響が生じる可能性は低いと言えます。
しかし一方で、世界有数の穀物大国であるロシアとウクライナからの供給量減少は、世界中の穀物価格に影響を与えます。
そのため日本でも、小麦粉やパンの価格が上がるなどの影響は少なからずあると覚悟しておいた方が良いでしょう。

とはいえ、もともと日本には主食としてお米を食べる文化が根付いているため、たとえパンの価格が上がったとしても、代替食品としてお米を食べる選択をすることができます。
実際、2008年に小麦の国際価格が急騰した際には、日本ではお米の消費量が上がったことが農林水産省の調査で分かっています。

このように輸入食料の値上げは、結果的に国内自給率を上げる場合もあります。
しかし現在、日本の食料自給率は決して高いとは言えません。
次の章では、日本の食料自給率を上げるために私たちにできることについて紹介します。

日本の食料自給率を上げるには

前述したように、ウクライナ侵攻は日本の食料事情に直接的な打撃を与えるわけではありません。
しかし今後の国際情勢次第では、日本も外国から食料を輸入することが難しくなるかもしれません。
突然の災害や国際的な混乱によって深刻な食料危機に見舞われる前に、日本は食料自給率を上げておくべきだと言えます。

日本の食料自給率を上げるためには、ずばり「国産品を積極的に食べる」に尽きます。
その上で、農林水産省が掲げている「食料自給率アップのための5つのアクション」は、以下の通りです。

➀今が旬の食べ物を選びましょう

②地元でとれる食材を日々の食事にいかしましょう

③ごはんを中心に、野菜をたっぷり使ったバランスのよい食事を心がけ、しっかり朝ごはんを食べましょう

④食べ残しを減らしましょう

⑥自給率向上を図るさまざまな取り組みを知り、試し、応援しましょう

「食料自給率(しょくりょうじきゅうりつ)を上げるにはどうすればよいのでしょうか。」(農林水産省)より引用

春ならたけのこ、秋ならサンマといった旬のものや、地元で作られた食材を食べることは、日本の食料産業全体を活性化させることにつながります。
また、「太りやすい」と誤解されがちなお米ですが、お米には食物繊維やミネラル、ビタミンなどの栄養素が豊富に含まれており、食べ過ぎなければむしろ痩せやすい体づくりの手助けをしてくれます。

それでも「お米食べると太っちゃうかも…」と心配な場合は、雑穀米や玄米など、比較的ヘルシーなお米を取り入れるようにすると良いかもしれません。
また「朝はパン派」という方は、毎朝ではなく週に1、2回だけでも「お米中心の朝ごはんの日」を作ってみてはいかがでしょうか。

スーパーに並ぶ食材は、傾向として外国産は比較的安く国産は高めとなっており、毎日のことを考えるとつい安い方を選んでしまいがちです。
しかし毎日でなくても意識的に国産の食品を買う人が少しでも増えれば、国内の生産者をサポートすることにつながり、それによって生産者が豊かになれば、結果的に食料自給率の向上に貢献できるかもしれません。

まとめ

毎日ウクライナ侵攻に関するニュースを観ていると、「現地の人々は大丈夫だろうか」「日本にも影響はあるのだろうか」など、次から次へと不安や心配事が浮かんできますよね。
この事態に対して私たちにできることは少なく、なんとも歯がゆい日々ですが、それでも今大切なのは「できることをやる」ということです。
今は冷静な目で各ニュースをチェックしたり、信頼できる人道支援先に寄付したりする一方で、改めて日本の食糧自給率についても考えてみてはいかがでしょうか。

参考URL:食料自給率って何?日本はどのくらい?(農林水産省)
参考URL:世界の穀物等の価格動向(農林水産省)
参考URL:ウクライナ危機と日本の食料安全保障(キャノングローバル戦略研究所)
参考URL:ロシア、小麦輸出を制限 ベラルーシなど近隣向け(日経新聞)

グローバル
読者登録・解除フォーム
読者登録をすると、更新情報をメールで受け取ることができます。


 

登録ボタンを押すと確認メールが届きますので、メールのご確認をお願いいたします。
お問い合わせ
太陽光発電・蓄電池等のご購入に興味のある方はこちらからお問い合わせください。
太陽光発電のお問い合わせ
蓄電池のお問い合わせ
太陽光発電最安値発掘隊
タイトルとURLをコピーしました