メガソーラーは土砂災害の原因となる?因果関係を徹底調査!

太陽光発電

2021年7月3日、記録的な大雨の影響により、静岡県熱海市伊豆山地区の逢初川で大規模な土砂災害が発生しました。
この災害によって24人が犠牲となり、現在も3人が行方不明となっています(2021年9月現在)。

当時、土砂の崩落起点から20~30mほど離れた場所にメガソーラー施設があったことから、SNS上では「メガソーラーが土砂災害の原因ではないか」といった憶測が飛び交いました。
その後他の説が浮上し、メガソーラー原因説は影を潜めましたが、いずれにせよ土石流発生のメカニズムに関する調査はまだ途上段階となっているのが現状です。

今回は、「メガソーラーは土砂災害の原因となり得るのか」について、さまざまな角度から考えていきましょう。

SNSで叫ばれた「メガソーラー原因説」

3日当時、グーグルマップ上の土石流発生現場には「熱海市にて土砂災害発生」という文字が表示されました。
発生現場と思われる場所には長細い区域があり、その斜面にはメガソーラーが敷かれていたため、Twitterやネットニュースのコメント欄では「メガソーラーが土石流を発生させたのでは」といった意見が飛び交いました。

しかし、その後静岡県がドローンで現場を撮影、調査したところ、土石流発生起点はメガソーラーのある区域ではなく、その区域の北東に隣接する場所だと判明しました。
県は、流れ下った土砂のうち、約半分は起点付近に積まれた盛り土だったと推測しています。

土石流発生から4日後の7月7日に開かれた記者会見では、「この盛り土は小田原市の不動産業者によって行われたもので、土の中には産業廃棄物である木くずも混ぜられていた」と説明されました。
なお、この土地の所有者の弁護士は、「盛り土が流出する危険性については認識してなかった」と話しています。

このように、今回の土石流発生には盛り土流出が大きく関わっていたことが判明したことで、「メガソーラー原因説」はあまり取り上げられなくなりました。
とはいえ土石流はさまざまな要因が重なって発生するものであり、また冒頭でも述べたように、土石流発生メカニズムの解明はまだ途上段階となっているため、「全く関連性が無い」とは言い切れないのが現状です。

「メガソーラーが土石流を引き起こす」と懸念される理由

静岡県は、土石流発生地となった場所を中心に土の成分を調査し、航空レーザー計測などによる解析を行い土地の形状変化をつかむことで、その発生メカニズムの解明に迫ろうとしています。
現時点では盛り土の存在が土石流発生の原因となったことは確実ですが、解析を進めていけば、隣接する尾根の上のメガソーラー群がもう一つの原因となっているかどうかが分かるのではないかと期待されています。

昔から全国のメガソーラー建設予定地では、太陽光発電事業者と建設を反対する地域住民との間で諍いが起きていました。
地域住民が建設を反対するのは、「元々の景観が失われるから」というだけでなく、「メガソーラー建設のために森林が切り開かれ、森林が担っていた保水機能が低下したら土砂災害が起こるのではないか」という懸念があるからです。

実際、メガソーラーを敷き詰めることによって降雨時の水の流れ方が変わり、事故を招いたと思われる事例はあります。
たとえば埼玉県嵐山町では、2020年10月に大雨が続いた後、メガソーラーが建設された土地の斜面が崩れています。(なお復旧工事は2021年5月末に終了)。

また、メガソーラー周辺で地盤が崩れたケースが発生するのは、事業者と地域住民が揉めているところだけではありません。
たとえば千葉県匝瑳市で行われているソーラーシェアリングは、自然や地域住民との共生の上で実現している優良事例です。
しかし2017年、突如周辺の地盤が崩れる被害が発生しました。

これは、メガソーラーを建設した場所は元々畑となっており、土が柔らかく雨を吸い込みやすかったからだと考えられています。
建設に伴い周辺を重機で固めると、土が一部硬くなり水を吸いにくくなりますが、それにより水が集まる場所に偏りが生じて被害が発生しました。

この他にも、メガソーラーや架台などといった太陽光発電設備は無傷にもかかわらず、その周辺で地盤が崩れたケースもあります。

メガソーラー付近の地盤崩壊に対する国の取り組み

経済産業省は今年4月1日、「発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令」を制定しました。
省令は第5条で「施設による土砂流出または地盤の崩壊を防止する措置を講じなければならない」と定めています。
経産省の電力安全課によると、省令が定められたことで、事業者に対する報告徴収を求めたり、立ち入り検査を行ったりすることが可能になり、監視の目が届きやすくなると考えられています。

国の制度改正は、2010年代半ば以降、中山間地域の丘陵地や里山、谷津などにメガソーラーを乱立する例が増えたことが背景にあります。
このような事業は多くの場合、「林地開発許可」が必要になります。
林野庁によると、林地開発許可件数のうち、太陽光発電事業を目的としたものは、2012年度は32件でしたが、2013年度に124件、2014年度255件と増加しています。

こうした中、2018年7月の西日本豪雨によって、神戸市須磨区の山陽新幹線のトンネル出口付近で、線路沿いの斜面に設置されたメガソーラーが崩落します。
また兵庫県姫路市北部の林田町では、太陽光パネル約1300枚が山の中腹から崩落しました。

西日本を中心とした太陽光パネル崩落事故が引き金となり、2019年には国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」によって、「地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン2019年版」が作られました。
この他にも近年も頻発しているメガソーラー付近の地盤崩落事故を受け、NEDOは新たなガイドラインを今年中に発表する予定となっています。

土砂災害発生リスクを回避するための取り組みと課題

熱海市の土石流災害を受け、赤羽国土交通大臣は7月6日、全国の盛り土の総点検を行う考えを示しました。
これが実行されれば、盛り土や建設残土を巡る現状の課題や見直しが期待されます。

また、小泉環境大臣は土砂災害発生リスクを回避するため、メガソーラーの建設を巡り、建設を避けるべき区域を指定するなどの規制を検討すると述べました。
しかし一方で、今年5月に国会で成立した地球温暖化対策推進法は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを活用した促進区域の設定を「努力義務」として市町村に課しています。

促進区域で事業を行うことが認められた事業者は、森林法、農地法、河川法などの関係手続きをワンストップで行えるよう、自治体がバックアップする仕組みがスタートしますが、建設抑制区域や(景観などの)保全区域への建設に関する項目は現状盛り込まれておらず、その点を疑問視する声も挙がっています。

再エネ設備の建設トラブルに対する自治体の取り組み

太陽光発電に限らず、大規模な再エネ設備は地域住民との共生が最も重要ですが、残念ながら再エネ設備の安全性にまだまだ見直しの余地がある間は、建設を巡るトラブルは起きてしまいます。

自治体によっては、このトラブルをあらかじめ回避すべく、不適切な立地を避ける「ゾーニング」を行っているケースもあります。
しかし問題は、こうした自治体によるゾーニングをサポートする法制度が整備されていない点です。
熱海の土砂災害後に開かれた環境省の審議会では、「今こそゾーニングの法制度化を考えるべきではないのか」といった専門家からの指摘が相次ぎました。

このように環境省には、脱炭素化を急ぐ前に、再エネ設備を取り巻く状況を改善していくための取り組みが求められています。

まとめ

メガソーラーが要因となって土石流が発生するかどうかはまだ解明されていませんが、建設場所の状態によっては周囲の地盤が崩れることも確かにあることが分かりました。
脱炭素化を進めるはずの再エネ設備が、自然を壊し、人々の生活までも脅かしてしまっては本末転倒です。
当社も太陽光発電システムを扱う会社として、決して他人事とは思わず、「人々にとって安心安全な再エネ設備」について今後も真摯に考えていきたいと思います。

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