富士山が環境汚染の危機に!日本が誇る世界遺産を守るために私たちがすべきこと

環境問題

日本最高峰の山として、世界的にも有名な富士山。
その富士山が2013年にユネスコの世界遺産に登録されてから、今年で8年目となります。
富士山の美しく荘厳な風貌は、古くから今に至るまで、日本人の自然観や日本文化の形成に多大な影響を与え続けています。

そんな富士山ですが、実は観光地化が招いた様々な環境汚染により、世界遺産登録が見送られた過去があります。
今回は、一体どのような環境汚染が富士山の自然を脅かしたのか、解決のために一体どのような対策が取られたのかなどについて見ていきましょう。

まずは富士山の歴史を知ろう

現在の富士山のベースとなる小富士が噴火活動を開始したのは、今から約10万年前のことです。
激しい噴火を幾度も繰り返しながら富士山は少しずつ規模を広げていき、やがて愛鷹山の北半分と小御岳の大部分を埋め、標高2500メートルを超える大きな山へと変貌を遂げました。
また、その頃の富士山は山腹から大量の溶岩を噴出しており、その噴出物が堆積していくことによって、美しい円錐形の山を形成していきました。

今から約一万年前になると、山頂の加工が西側に移り、現在の富士山頂となるもう一つの峰を形成し始めます。
再び激しい噴火によって急速に標高が上がった富士山は、東西に二つの頂を持つツインピークとなりました。

しかし今から約2900年前、東側の古富士山が突如として崩壊し、それにより深い谷間が生まれました。
古富士山の崩壊によって降り注いだおびただしい量の土砂はたちまち東側の麓を覆い尽くし、雨が降るたびに土石流となって駿河湾や相模湾になだれ込みました。
その間も、西側の峰は噴火を繰り返し、谷間は新しい噴出物で埋め尽くされ、なだらかな山体を形成していったのです。

その後、平安時代には大量の溶岩が流れた「貞観噴火」、江戸時代には約2万メートルもの噴煙が立ち上った「宝永噴火」が発生します。
この二つの大規模な噴火によって、富士山の形状は大きな変貌を遂げ、現在の美しい姿になりました。

宝永噴火以降、富士山は噴火することなく静かに佇んでいますが、それでも今後噴火の可能性はゼロではないとして、気象庁は富士山を「休火山」ではなく「活火山」に登録しています。
万が一の噴火による影響を最小限に抑えるべく、そして長い歴史を経て美しい姿となった富士山をこれからも守るべく、現在でも様々な機関によって研究や保護活動が行われています。

富士山の自然を脅かした様々な環境問題

ゴミの不法投棄

富士山では1960年頃から観光開発が進み、国内外から多くの登山客が訪れるようになりました。
しかし、当時はまだ環境問題に対する意識が低かったことから、一部の心無い人々によるゴミのポイ捨てが頻発する事態となりました。
富士山に捨てられるゴミには、たばこの吸い殻、ペットボトル、乾電池、空き缶などもあれば、建設廃材、自動車、冷蔵庫、パソコンなどの大型廃棄物もあったそうです。
これらの大きなゴミは、わざわざダンプカーなどで運んで捨てていたと考えられています。

さらに、かつての製品にはPCB(ポリ塩化ビフェニール)などの有害物質が含まれていることが珍しくなく、また乾電池や体温計などには水銀が使用されていました。
過去富士山に捨てられたゴミに含まれていたこれらの危険物質は、長い時間をかけて雨によって流出し、土壌や水を汚染し続けました。
そのため、かつては日本を代表する名水と言われていた富士を水源とする忍野八海の水も、今は飲むことが推奨されていません。
また、捨てられたプラスチック類やガラス片などは自然の中で分解することができないため、富士山に生息しているリス、タヌキ、キツネ、ツキノワグマなどの多様な野生動物の命を脅かす存在として危惧されています。

し尿処理の不備

毎年多くの登山客が訪れる富士山では下水処理機能が十分に追いついておらず、山小屋のトイレからは、し尿が垂れ流され続ける状態が続いていました。
そのため山小屋が立ち並ぶ一帯では汚物臭がひどく、し尿と違って地中に吸い込まれることのないトイレットペーパーは地表に残り、富士山の山肌に不自然な「白い川」を作り上げていました。

また、トイレ不足に関しては2000年前後から対策がとられるようになっていますが(後述)、いまだにトイレの少ない一帯では、しばしば大量の汚物が放置されているのが発見されています。
この理由としては、山小屋のトイレにたどり着くまで我慢できなかった、または山小屋のトイレは基本有料となっているため使用量を払いたくなかった、などが考えられています。
気温の低い富士山では糞尿が分解しきれず残ってしまう可能性があり、これも生態系に悪影響を及ぼすとして懸念されています。

富士山の自然を守るための対策

市民ボランティアによる清掃活動

心無い人々によって富士山の自然が脅かされる一方で、富士山を愛する地元の人々による環境保護活動も進められてきました。

例えば、富士山の環境保護を目的として1998年に立ち上げられたNPO法人「富士山クラブ」は、6000人以上の市民ボランティアと共に、毎年60回を超える大規模な清掃活動を行っています。
この活動には地元企業や学校、その他の様々な団体、そして子供から高齢者の方まで幅広く参加しており、毎年数十トンにのぼるゴミを回収しています。

富士山トイレ浄化プロジェクト

富士山クラブは、前述のし尿による「白い川問題」の解決にも大きく貢献しています。
2000年から2002年にかけて進められた「富士山トイレ浄化プロジェクト」では、便槽に詰めた杉チップに含まれる微生物の働きで糞尿を分解、堆肥化させるというバイオトイレの設置に取り組みました。
バイオトイレは富士山の不安定で過酷な気象条件においても十分に機能するよう何度も改良が重ねられ、山小屋と連携を取りながら従来のトイレから切り替えられていきました。

こうした地道な活動の結果、富士山のし尿やゴミは圧倒的に減少し、行政もバイオトイレへの補助金制度を設けるなど山小屋への普及促進活動を行いました。
現在では五合目より上は、し尿やゴミはほとんど無くなっています。

入山税の導入

富士山の自然環境が少しずつ改善に向かっているとはいえ、それでもマナーのなっていない登山者は後を絶ちません。
また、2020年夏は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため閉山されましたが、2021年は例年通り山開きしたため、改めて心無い登山者によるマナー違反が懸念されています。

そこで2021年4月、静岡と山梨の両県は、今までは任意で集めていた入山料を将来的には「入山税」として義務的に徴収する方針を固めました。
これは、5合目より先に立ち入る登山者を対象に、一定の条件を課した上で「法定外目的税」として入山料を支払ってもらうというものです。
税制度の導入には、登山者のマナー向上や登山人数抑制などの狙いがあり、登山者には事前予約や講習受講、装備の確認といった立ち入り条件も新たに設定されます。
集めた税金は、環境保護や登山者の安全対策、そして「世界遺産としての富士山」の情報発信に使われるそうです。

現時点では金額や導入時期については未定となっており、両県は今後徴収漏れなどが起こらない対策を講じながら、具体的な導入に向けて取り組みを進めていく予定です。

まとめ

今回は、富士山を脅かす環境問題とその対策について紹介していきました。
様々な取り組みによって、五合目より上は少しずつ本来の美しさを取り戻しつつある富士山ですが、国道や県道が近い山麓部ではまだまだゴミのポイ捨てが続いています。
この状況が改善しなければ、世界遺産登録が取り消される可能性もゼロではありません。

日本最高峰の美しい山である富士山をこれから先も守っていくためには、自然保護の大切さや自然環境に立ち入る際のモラルなどについて、一人一人が今一度しっかり考えてみることが大切ですね。

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