目指すは人も自然も豊かになる未来!「パーマカルチャー」の魅力とは

SDGs

皆さんは、「パーマカルチャー」をご存知でしょうか?
簡潔に説明すると、パーマカルチャーとは「人も自然も豊かになるための社会デザイン」のことです。
この言葉自体は40年以上前から存在していましたが、2015年にSDGsがスタートして以降は、
より一層注目が高まっています。
今回はパーマカルチャーの詳しい意味、そしてパーマカルチャーが目指す持続可能性についてチェックしていきましょう。

パーマカルチャーとは?

パーマカルチャー=持続可能性なライフスタイル

パーマカルチャーとは、

パーマネント(永続性)
・農業(アグリカルチャー)
・文化(カルチャー)

を組み合わせて生まれた造語のことです。
永続可能な循環型の農業をもとに、人と自然の両方が豊かになるような関係性を築いていくために生み出されたデザイン手法です。

デザイン手法といっても、形や色をクリエイトすることではなく、自然と人間が搾取し合うことなく共存できる社会システムを創造していくことこそが、パーマカルチャーが目指すデザインとなっています。

また、デザインの対象は農業だけにとどまらず、動植物、建物、コミュニティなど、生活に関わるすべてが含まれています。
つまり、パーマカルチャーとは「持続可能なライフスタイル」そのものを指しているのです。

パーマカルチャーが目指す世界

パーマカルチャーは1970年代、オーストラリアで教師をしていたビル・モリソンとデイヴィッド・ホルムグレンが提唱したのが始まりだと言われています。

広大な自然を有するタスマニア州で生まれ育ったビルは、猟師や漁師を経験する中で身の周りの自然が急速に失われていることに気づきます。
失われた環境を在るべき姿へと戻すため、ビルは今日のパーマカルチャーにつながる活動を始めました。

彼はパーマカルチャーの目的を、「地球上を森で覆い尽くすこと」と語っています。
自然が与えてくれるものを食べ、多種多様な生物とともに生きていくことが、パーマカルチャーが目指す世界です。

パーマカルチャーが提唱する「3つの倫理」と「12の原則」

社会システムの持続可能性を考えるパーマカルチャーの範囲は、非常に多岐に渡っています。
そこで、創始者のビルとデイヴィッドはデザインや実践に取り入れる際の基準として、「3つの倫理」を提唱しています。
その3つの倫理は、以下の通りです。

「3つの倫理」
・地球への配慮(Care of the earth)
人は地球の存在なしに繁栄できないということを理解し、地球環境に配慮すること

・人々への配慮(Care of the people)
人が生きていくため、必要な資源を供給していくこと


・余剰物の共有(Fare share)
他者から奪うことなく、分かち合い与え合うこと


また創始者の一人であるデイヴィッドは、「3つの倫理」を基準にした上で、さらに次のような「12の原則」を提唱しています。

12の原則」
1.観察と相互作用
2.エネルギーの獲得と貯蓄
3.収穫
4.自律とフィードバックの活用
5.再生可能な資源やサービスの活用と尊重
6.ごみと無駄を出さない
7.全体からディテールのデザイン
8.分離より統合
9.ゆっくり小さな解決を目指す
10.多様性の活用と尊重
11.接点の活用と辺境の尊重
12.変化に対して創造的な活用と対応


これらの倫理と原則をもとに、現在では国内外問わず様々な団体がパーマカルチャーを実践しています。

国内外におけるパーマカルチャーの実例

パーマカルチャーは現在、世界各国のエコビレッジなどを中心に実施されています。
エコビレッジとは、「住民が互いに支えあう仕組み」と「環境に負荷をなるべくかけない暮らし方」を求める人びとが共同生活を送るコミュニティ、またはそのコンセプト自体のことです。
ここでは、エコビレッジなどによる具体的なパーマカルチャー取り組み事例について紹介していきます。

クリスタルウォーターズ(オーストラリア・クイーンズランド)

クリスタルウォーターズは、オーストラリアで1988年に創立された世界初のパークカルチャービレッジです。
持続可能な環境と社会の実現を目的に掲げて開発された土地は、約80%が森林や貯水池、約20%が居住地となっています。

クリスタルウォーターズでは住民たちの手によって積極的に植林が行われた結果、コミュニティの敷地内には森林が広がり、森が回復したことで多くの野生動物たちが生息するようになったと言われています。

また敷地内の建物にも、雨や有機物などのエネルギーがすべて循環するようなデザインが施されています。
屋根に降った雨水は雨どいからパイプをつたってレインタンクに貯められ、飲料水、トイレ用水、シャワーにまで使われます。
使った後の水も微生物によって分解され、果樹畑や野菜畑用の水として使われます。

さらにレインタンクは野菜畑の斜面の下に設置されており、砂土が崩れてくるのを防ぐ壁の役目も担っています。
このように、パーマカルチャーにおける建築物にはすべて多様な意味があり、いくつもの役割を兼ね合わせて活用されます。

イサカエコビレッジ(アメリカ・ニューヨーク)

イサカエコビレッジは、1991年にアメリカで最初に設立されたエコビレッジです。
敷地のうち約10%が居住区となっており、残り約90%は自然環境がそのまま残されています。

さらに、居住地で使われている電気のほとんどは太陽光発電でまかなわれています。
敷地内にはオーガニック野菜を育てるための広大な農地が4ヶ所あり、農業を始める人のための教育の場も設けられています。

サハイナン(タイ)

サハイナンは、2014年末にタイ北部の山中で設立された家族経営のパーマカルチャー農場です。
電気を一切使わず自給自足するといった、パーマカルチャーコミュニティの中でも特に自然に根付いた生活を実践しています。

カシューナッツ、アボカド、バナナ、パパイヤ、マンゴー、ドリアンなどの様々な果物や野菜を栽培する一方で、パーマカルチャーのワークショップを行うなどの取り組みも行われています。

パーマカルチャー・センター・ジャパン(日本・神奈川)

パーマカルチャー・センター・ジャパンは、1996年に神奈川県藤野町(現在の相模原市緑区)に設立された日本初のパーマカルチャー施設です。
敷地内にはガーデンや水田があり、教育を目的とした米づくりなどが行われています。

また、ここでは日本国内で唯一「パーマカルチャーデザイナー」という資格を取得することができます。
公式ウェブサイトでは、日本ではまだまだ知名度の低いパーマカルチャーについて詳しく知ることができます。

北海道エコビレッジ推進プロジェクト(北海道・余市)

北海道エコビレッジ推進プロジェクトは、エコビレッジによる「持続可能な暮らしと社会」を創造するための技術や考え方を学び、広めるために設立されたNPO法人です。
エコビレッジ生活の体験塾や、パーマカルチャーについて学べる講座やワークショップなどが開催されています。

パーマカルチャーが広まるために必要なこと

パーマカルチャーという言葉は、エコビレッジでの運動とともに、サステナブルな暮らしに関心が高い人の間で普及しつつあります。
しかし、都市生活に慣れた人々やサステナブルにあまり関心のない方からすると、パーマカルチャーはハードルの高い印象を持たれることが多く、本来の意味や実践方法が伝わっていないことが懸念されています。

しかしパーマカルチャーとは、ライフスタイル全体への提案です。
つまり少し意識を向ければ、暮らし方を大きく変えなくともパーマカルチャーを実践することができます。

例えばスーパーで買い物をする際、有機栽培の野菜を買う、プラスチック包装されていない商品を選ぶなど、サステナブルな選択を意識することもパーマカルチャーの実践です。
多くの人が身近なところからサステナブルを意識するようになれば、パーマカルチャーは今以上に広まっていくでしょう。

まとめ

今回は、持続可能なライフスタイルを提唱するパーマカルチャーについて紹介していきました。
コロナ以降、エコビレッジへ直接行ってパーマカルチャーを体験することは難しくなってしまいましたが、前述したように日ごろからサステナブルな選択を心掛けるなど少し意識するだけでも、パーマカルチャーの普及に貢献することはできます。

何よりも、まずは私たちが日常で自然からどんな恩恵を受けているか、私たちの消費行動が環境へどんな影響をもたらしているのかを知ることが、初めの一歩となるのではないでしょうか。

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