オリンピックが環境問題に与える影響とは?具体例と対策を知ろう

環境問題

古代ギリシャに誕生し、今では4年に一度のスポーツの祭典として世界中の人々に親しまれているオリンピック。
そして、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大に日本中が大打撃を受ける中、1964年から数えて実に56年ぶりに東京で夏季オリンピックが開催されました。

そんなオリンピックですが、年々スポーツの祭典としてだけではなく商業的な意味合いが大きくなった結果、残念ながら地球環境に良からぬ影響を与えている側面があるのも事実です。
そこで今回はオリンピックの歴史を知りつつ、オリンピックの商業化による地球環境への悪影響と、それに対し近年行われた対策について見ていきましょう。

オリンピックの歴史

発祥は古代ギリシャ

現在のオリンピックの原型と言われているのが、古代ギリシャのエーリス地方に存在していたオリュンピアという都市で、4年に一度行われていた古代オリンピック(オリュンピア大祭/オリュンピア祭典競技とも呼ばれる)です。
この祭典の起源や由来と言われているものには諸説ありますが、中でも有力だと思われているものは次の2つです。

・ギリシャ神話における英雄アキレウスが、トロイア戦争で死んだ親友パトロクロスの死を追悼するために競技会を開催した
・同じくギリシャ神話における英雄ヘラクレスがエーリスに攻め入り勝利した後、記念としてオリュンピアにゼウス神殿を建て、そこで4年に1度競技会を開催した


いずれにせよこれらの説の多くは、オリンピックが開催されるようになり暫くしてからエーリス市民が創作したものだと考えられています。

古代オリンピックは紀元前8~4世紀頃に行われ、最盛期にはギリシャ中から選手が参加したと言われています。
当時のギリシャの人々にとってこの祭典は非常に神聖視されており、選手たちの移動期間から大会が終わるまではあらゆる戦も休戦状態となっていたそうです。
ちなみに1963年のベルリン五輪以降恒例行事となっている聖火リレーは、古代オリンピックの競技の1つにあった「たいまつ競争」が基になっています。

近代オリンピックのはじまり

私たちがよく知る国際的な総合スポーツ大会であるオリンピックは、正式には「近代オリンピック」と呼ばれています。
19世紀末、フランスの教育者であるピエール・ド・クーベルタンが「古代オリンピックを基にした国際的なスポーツ大会を開催しよう」と提唱したことにより、1896年に古代オリンピック発祥地であるギリシャの首都・アテネにて第一回夏季オリンピックが開催されました。

その後2度の世界大戦による中断を挟みつつも開催は継続され、1924年にはフランス・シャモニーモンブランにて第一回冬季オリンピックが開催されています。
そして1994年のリレハンメル五輪以降は、夏季大会と冬季大会が二年ごとに交互に開催されるようになりました。
また、1988年のソウル五輪以降は、「オリンピックとパラリンピックの連動」が強化され、オリンピックと同じ年に同じ場所でパラリンピックの開催も行われるようになっています。

日本とオリンピックの関係

日本が初めて参加したオリンピックは、1912年のストックホルム五輪です。
最初は男子陸上競技のみの参加でしたが、1928年のアステルダム五輪からは女子選手も参加するようになりました。

初のラジオ実況が実施された1936年のベルリン五輪以降は徐々に国民のオリンピックに対する関心も高まり、1940年には日本初のオリンピック招致が決定しましたが、当時激化していた日中戦争の影響により、結局この時は開催権を自ら返上しています。

その後1948年に行われたロンドン五輪には戦争責任により参加が許されませんでしたが、1952年のヘルシンキ五輪より参加復帰しています。
さらに1964年には悲願だった夏季オリンピックを東京で開催し、1972年には初の冬季オリンピックを札幌にて行っています。
また1998年には、2度目となる冬季オリンピックを長野にて開催しました。

そして2020年、2度目となる夏季オリンピックの開催を東京で行うことが決まっていましたが、冒頭でも触れた通り新型コロナウイルスの影響により延期となってしまいます。
延期後の開催予定年である2021年になってもパンデミック収束の目途はつかず、各方面から開催の是非を問う声が挙がっていましたが、結果的には予定通り開催されました。

オリンピックが地球環境へ及ぼす影響

長い歴史の中で「経済発展や国家成長の象徴」としての目も向けられるようになったオリンピックですが、ここでは商業的価値に重きを置いたが故に問題となった環境への影響について見ていきたいと思います。

オリンピックに向けた整備のための森林伐採

オリンピックの開催地に選出された都市は、多くの場合競技を行うためのグラウンドや選手が滞在するための選手村、そして国内外から訪れる観客を迎え入れるためのホテルを建設します。
しかし、これによって元々存在していた森林などの自然が破壊されてしまうケースは、残念ながら少なくありません。
国内において問題となった主な具体例には、次のようなものがあります。

➀札幌五輪

支笏洞爺国立公園(千歳市)内にある恵庭岳の国有林を伐採し、アルペンスキーの滑走路を建設。
自然保護団体からは強い批判の声が上がったため、大会開催後に施設の解体及び植林が行われた。
この復元工事には2億円以上の費用がかかったと言われている。

②長野五輪
手つかずの自然が残る滋賀県・岩管山がアルペンスキーの競技場候補に上がったところ、自然保護連盟により反対運動が行われる。
その結果岩管山の開発は中止となり、既存のスキー場が競技場として使用されることになった。


③東京五輪(2020年)
葛西臨海公園内にカヌー競技場の建設が予定されていたが、「豊かな自然や多数生息している水生生物の存在が危ぶまれる」と自然保護団体や地元住民が大反対したため、2016年に計画は白紙となった。


ここで紹介した実例以外にも、過去競技場建設のために伐採された森林は数多くあると考えられています。

ごみ問題

オリンピック開催時には国内外問わず大勢の観光客が訪れるため、大会開催後には大量のごみが排出されていることも少なくありません。
海外から訪れた人からすれば、「その国の分別ルールが難しいと捨てにくい」という点もあるので、開催地には「分別ルールの簡略化」および「ゴミ捨てを促す積極的かつ分かりやすいアナウンス」が求められると言えるでしょう。

会場跡地の廃墟化

華々しいオリンピックが開催されたと思いきや、大会終了後は会場跡地が有効利用されることもなく、そのまま廃墟化してしまうパターンもあります。
2016年に行われたリオ五輪に向け、巨額の費用を投じて整備が行われた「マラカナンスタジアム」は、大会終了後は整備されることもなく荒廃の一途を辿り、いまやスタジアム内部はごみで埋め尽くされています。
また、同じくリオ五輪のために造られたゴルフ場やプールもまったく使われることなく荒廃しきっていることが分かっています。

開催地それぞれに異なる事情があるため一概には言えませんが、このような事態を免れるためにはオリンピックを「商業価値のある一時的な祭典」と捉えるのではなく、「未来をより良くしていくための持続的な取り組み」と捉えることが大切なのではないでしょうか。
「持続可能なオリンピックとは何か」を知るためにも、次の章では環境面において評価されたロンドン五輪について見ていきましょう。

2012年のロンドン五輪に学ぶ「持続可能なオリンピック」

2012年に開催されたロンドン五輪は、「オリンピック史上最も環境に配慮した、持続可能なオリンピックおよびパラリンピック」と評価され、大きな成功を収めています。

中でも環境保全に大きく貢献したとされているのが、自転車競技場の「ベロドローム」です。
このベロドロームの建設には森林管理協議会が認めた「FSC認証」付きの木材が使用されている他に、
「自然の照明として太陽光を取り入れる」「雨水をトイレで流す水として再利用する」などの工夫が施され、大きく話題となりました。

ベロドロームの実現には、ロンドン市が大会開催に先立って設置した「持続可能なロンドン2012委員会」が大きく貢献しています。
この委員会とWWF(世界自然保護基金)がパートナーシップを組み、「地球1個分のオリンピック」を意味する「ワン・プラネット・オリンピック」をテーマに掲げ環境保全に尽力したことで、ロンドン五輪は後世に続く「持続可能なオリンピック」のロールモデルとなりました。

そしてこの取り組みにより、「環境保全とオリンピック成功は両立可能だが、そのためには専門機関による様々な角度からの視点が必要」ということも世界に知らしめました。

まとめ

今回はオリンピックの歴史から、オリンピック開催が環境に与える具体的な影響などについて見ていきました。

東京五輪の開催については、閉会から半年以上経つ今なおさまざまな意見が挙がっていますが、もしまた日本で五輪を開催することが決定した暁には、是非環境面にも十分配慮した上で開催されて欲しいですね。

そのためには国が具体的な取り組みを行うのはもちろんのこと、私たち一人一人が環境問題への理解を深めることも必要不可欠です。
次のオリンピックが開催されるまでには、一人でも多くの人が環境問題に意識を向けた社会になっていることを願うばかりです。

参考URL:東京都教育委員会「オリンピックとは」
参考URL:五輪施設の今がわかる34枚の写真…ベルリンから北京、ロンドン、リオまで

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