卒FIT後の太陽光発電システム廃棄に備えてやっておくべき「積立」とは

太陽光発電

野立て太陽光発電システムが卒FITを迎えた後、そのまま事業を継続することなく終了する場合は、設備をすべて解体・撤去する必要があります。
そこで直面するのが、「廃棄に必要な費用はどうやって捻出するか」という問題です。
現時点では、すべての発電事業者が廃棄等費用を確保しているとは言い難く、このままでは将来的にソーラーパネル等の不法投棄が増加するのではないかと懸念されています。

そんな中、資源エネルギー庁(以下、エネ庁)は2021年9月、「廃棄等費用積立ガイドライン」を公開しました。
また11月19日には、2012~2014年度にFIT認定を受けた50kW以上の設備を対象に、「内部積み立ての事前相談の開始について」を公表しました。

これは、2020年6月にFIT法の改正が成立し、2022年4月1日の施行期日に向けて「再エネ設備の廃棄等費用の積立制度」が設立されたことを受けてのものです。
この制度の設立以降、太陽光発電システム事業における廃棄等費用の積み立てが義務化されました。

今回は、エネ庁が公表したガイドライン等を参考に、卒FITを迎えた再エネ設備を廃棄する時に備えてやっておくべき積立について解説します。

廃棄等費用の積み立てが義務されたのはなぜ?

2012年7月にFIT法が導入されて以降、発電事業では再生可能エネルギーに対する投資が推進されるようになりました。
中でも特に大々的に普及したのが、太陽光発電事業です。
太陽光発電事業は他の再エネ事業に比べてハードルが低く、多様な事業者が参入できたことが大きな理由だとされています。

しかし、それゆえにずさんな管理を行う事業者も少なくないことから、多くの設備が卒FITを迎えようとしている今、運用が終わったソーラーパネルが放置または不法投棄されるのではないかという懸念が高まっています。
ソーラーパネルには鉛やセレンといった有害物質が含まれているため、もし大量に不法投棄されれば、環境に及ぼす悪影響は計り知れません。

太陽光発電システムの解体、撤去、そしてこれに伴い発生する廃棄物等の処理は、廃棄物処理法等に基づき、事業者が責任を持って実施する必要があります。
特に10kW以上の産業用太陽光発電システムについては、FIT法の設立以来、廃棄等に必要な費用を想定した上で、その廃棄等費用を含めた売電価格が定められてきました。
それに伴い、事業者には卒FIT後(基本的には事業開始から20年後)に備えて廃棄等費用を積み立てることが呼びかけられていましたが、依然としてその実施率は低いままでした。

そこで2018年4月、エネ庁は10kW以上の産業用太陽光発電システムの廃棄等費用の積み立てを「太陽光発電の事業計画策定ガイドライン」における遵守事項とし、事業者には事業開始前に廃棄等に必要な費用を算出することと、その積立計画を記載することを求めました。
また同年7月からは、FIT法認定者が行う定期報告において、積立状況の進捗を報告することを義務化しました。

しかし、積み立ての水準や時期の決定は事業者に委ねられていたこともあり、その後も積み立て実施率は中々上がりませんでした。
この状況を受け、10kW以上の太陽光発電事業者には、廃棄等費用の積み立てが「義務」として課せられることになったのです。

「外部積立」と「内部積立」の違い

廃棄等費用の積み立てを行う場合、原則的には売電収益から積立金を差し引く「外部積立」が適用されます。
ただし例外として、長期的に安定した発電事業を行う責任能力のある事業者だと認められれば、「内部積立」ができるケースもあります。

内部積立を行うために必要な条件は、以下の通りです。

➀50kW以上の設備を所有していること
②電気事業法上の発電事業者であること
③長期安定的な発電事業の実施に向けた事業計画等を作成し、これを公表すること
④定期報告のタイミングまでに適正な額の積立を行い、これを公表すること
⑤金融機関や会計士による定期的な確認が行われていること
⑥上記1〜5を満たさなくなった場合、遅滞なく外部積立に移行すること

上記6点すべてクリアしている場合に限り、内部積立は認められます。

積立期間と積立金額

廃棄等費用の積み立ては、FIT法の適用期間20年間のうち10年目から開始し、卒FITを迎える20年目に終了します。
積立金の基準額は、FIT法の認定を受けた時期によって異なります。

各年度における基準額の一例は、以下の通りです。

【2012年度】
・売電価格…40円/kWh
・基準額…1.62/kWh

【2017年度】
・売電価格…21円/kWh
・基準額…0.99/kWh

【2021年度】(50kW以上250kW未満の場合)
・売電価格…11円/kWh
・基準額…0.66/kWh


積立総額は、「年間発電量×基準額」から算出されます。
上記を基に、たとえば2017年度に50kWのソーラーパネルを設置した場合、大体以下の金額となります。

・年間発電量:50,000kWh
・年間積立額:50,000kWh×0.99円/kWh =49,500円/年
・積立総額:49,500円/年×10年間=495,000円


また、2021年度に同容量のソーラーパネルを設置した場合は、大体以下の金額となります。

・年間発電量:50,000kWh
・年間積立額:50,000kWh×0.66円/kWh=33,000円/年
・積立総額:33,000円/年×10年間=330,000円

このように、廃棄等費用の積立金額は売電価格と共に年度ごとに変動しています。

積立金を取り戻すには

「卒FITを迎えて設備を廃棄したいので、積立金を預け先から取り戻したい」という場合は、設備の解体・撤去が確実に見込まれることを証明する資料を提出する必要があります。
資料提出後、審査を通過すれば取り戻しができます。
その際、基本的に積み立てた費用は全額取り戻すことができます。

また、「FIT期間中だけど取り戻したい」といった場合は、事業を畳むか縮小する場合に限り取り戻し可能となっています。
内部積立の場合はこれに加え、修繕費等が必要となった場合も一時的な取り戻しが可能ですが、その場合は一年以内に再び基準額まで積み立て直す必要があります。

なお、「卒FIT後もパネル交換やメンテナンスをしながら事業を続けたい」という場合は、設置されているソーラーパネル全体の容量に対して交換するソーラーパネルの枚数が一定値を超えれば、それに応じた積立金の取り戻しが認められています。

一方、このように劣化した部分を交換しながら長期的に事業を継続する場合は、交換したパネルが劣化した際の撤去・廃棄に必要な費用の確保についても検討する必要があります。
現時点で設定される積立金額は、FIT法の認定を受けた太陽光発電システムの「一度きり」の廃棄を想定した費用となっているため、卒FIT後も事業を継続する場合は、事業者自身が廃棄等費用を確保する必要があります。

実際の廃棄にかかる費用が積立金額より高かった場合

設備を廃棄するタイミングが来たものの、積立金だけでは廃棄費用を賄えそうにない…といった事態に直面する可能性はゼロではありません。
その場合、不足分は基本的に発電事業者自身が負担することになっています。

卒FIT前に事業者が倒産した場合

FIT期間中に発電事業者が倒産した場合、事業自体は他の事業者に受け渡されて継続する場合がほとんどです。
その場合、積立金も後続の事業者に引き継がれ、廃棄等費用も確保され続けることになります。
また、債権者によって積立金を差し押さえられたとしても、必要条件が満たされない限り積立金の取り戻しを行うことは原則的に不可能です。

まとめ

太陽光発電システムの事業終了後に適切な廃棄作業を行わなかった場合、土地に迷惑がかかるだけでなく、周辺環境の自然を著しく損なう可能性があります。

何より不法投棄は立派な犯罪なので、もし判明すれば5年以下の懲役か1000万円以下の罰金、もしくはその両方が課せられます。
環境のためにも自分自身のためにも、運用終了後の再エネ設備は必ず適切に廃棄するべきだと言えるでしょう。

もし「積み立てについてもっと詳しく知りたい」と思われた場合は、どうぞお気軽に当社までお問い合わせください。

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