宇宙の環境問題「スペースデブリ(宇宙ごみ)」について知ろう

宇宙

これまで当コラムでは、地球上で起こっている様々な環境問題について何度か取り上げてきました。
しかし、今や環境問題は地球に留まらず、宇宙空間においても日に日に深刻さを増しています。
その主な原因は、すばり「スペースデブリ(または宇宙ゴミ)」にあると言えます。
とはいえスペースデブリという言葉を聞いたところで、あまりピンとこない人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、「今宇宙の環境を脅かしているスペースデブリとは何か」について知りつつ、スペースデブリを減らすために各国で行われている対策について見ていきましょう。

スペースデブリとは

スペースデブリとは、「何らかの観測もしくは研究をするわけでもなく、地球の衛星軌道上を周回している人工物体」のことです。
スペースデブリの中には、耐用年数を過ぎて(あるいは事故や故障によって)運用が不可能となった人工衛星、衛生の打ち上げに使われたロケット本体やその破片、宇宙飛行士が落とした工具や手袋など様々なものが含まれています。
また、デブリ同士が衝突して生まれる「微小デブリ」というものもあります。
ちなみに元々宇宙空間に存在している鉱物や金属などで構成された宇宙塵は、スペースデブリではなく「流星物質」と呼ばれます。

1957年に旧ソ連が世界初の人工衛星「スプートニク1号」を打ち上げて以降、世界各国ではこれまで多くの打ち上げが行われ、現時点でその回数は4,000回にものぼると言われています。
しかし、打ち上げ回数が多くなればなるほど宇宙空間に発生するスペースデブリの量も増加し、その結果宇宙には現在5,000トン近いスペースデブリが浮かんでいます。

現在観測されているスペースデブリの数は?

アメリカの「連合宇宙運用センター(CSpOC)」が観測したデータによると、2019年の時点で軌道上には、19,538個ものスペースデブリが浮かんでいることが分かっています (低軌道約100㎜以上、静止軌道約1m以上の物体が追跡対象)。
さらに観測できていない分も含めると、100㎜以上の物体は2万個、10㎜以上の物体は50~70個、さらに1㎜以上の物体は、なんとおよそ1億個以上もあると推測されています。

これらのスペースデブリはただ単に軌道上に浮遊しているだけではなく、ある程度の速度を持って周回しています。
そして軌道上にある2つの異なる物体が衝突する場合、その衝突速度は約12km/s前後だと言われていますが、これはライフル銃の弾丸速度の約10倍に相当します。
そのため、もしスペースデブリが運用中のロケットや人工衛星と衝突事故を起こした場合には、最悪の場合ミッションの継続が困難なほどの壊滅的破壊を引き起こすおそれもあります。

スペースデブリによる衝突事例

スペースデブリが引き起こしたと見られる実際に起きた衝突事故には、次のようなものがあります。

【1980年代】

・1981年…旧ソ連の人工衛星「コスモス1275号」がスペースデブリと見られる物体との衝突によって破壊され、これによりコスモス1275号自体も数百個のデブリを発生させる。

【1990年代】

・1996年…フランスの人工衛星「スリーズ」がスペースデブリと衝突し、衛星本体から取れた一部が新たなスペースデブリとなる。

【2000年代】

・2005年…1974年に打ち上げられたアメリカのロケット部品と、1999年に打ち上げられた中国のロケット破片が2005年に衝突。
・2009年…機能停止中の「コスモス2251号」と、アメリカの通信衛星「イリジウム33号」が衝突。これにより少なくとも500個以上のスペースデブリが発生。

【2010年代】

・2013年…ロシアの小型衛星「ブリッツ」にスペースデブリが衝突。機能喪失となる。
・2013年…、エクアドルの超小型衛星「ペガソ」と、旧ソ連が過去に打ち上げたロケットの一部が衝突し、制御不能となった。

ここで紹介した事例はほんの一部で、他にも観測されているもの、されていないもの含め、スペースデブリが原因と見られる衝突事故はいくつも発生しています。
さらに、過去には実験を目的とした意図的なスペースデブリの散布も何度か行われており、その度に国際的な批判の声が上がっています。

スペースデブリを増やさないための国際的な取り組み

スペースデブリのこれ以上の発生を食い止めるべく、国連宇宙平和委員会(UNCOPUOS)は「スペースデブリ低減のためのガイドライン」を2007年に発表しています。

ガイドラインには、

・ロケットや衛星などの運用中にスペースデブリを放出しない
・放出するとしても最低限に抑える
・研究や実験を名目とした意図的な破壊活動や、それに準ずる危険な活動を行わない
・運用中に軌道上でスペースデブリ含む他物体と衝突しないよう、設計段階から細心の注意を払う

といったことが記されています。

これらのガイドラインを基に、国連宇宙局(UNOOSA)が主導となって国際的な議論を進め続けています。

具体的なスペースデブリ対策

観測

「軌道上に一体どれだけのスペースデブリがあるのか」
「スペースデブリは今どのように動いているのか」
などの点を把握するためには、軌道上を常に観測・監視しておく必要があります。
そのため、現在ではアメリカの「宇宙監視ネットワーク」によって、スペースデブリを含んだ軌道上を周回する物体の追跡や識別などが行われています。

防御

万が一スペースデブリが衝突してきても致命的なダメージを受けないよう、現在国際宇宙ステーションの外壁には、「ホイップルバンパー」という特殊な防御素材が使用されています。
これにより、1㎝以下のスペースデブリであれば防ぐことが可能になっています。
とはいえホイップルバンパーのような防御素材は、質量に制約のある衛星に取り付けることは現状困難となっているため、この点に関しては技術の刷新が待たれています。

回収

軌道上にあるスペースデブリをすべて取り除くことは、現在の技術では中々難しいと言えます。
しかし近年では国内外の多くの民間企業が力を合わせ、スペースデブリを回収するロボットアームの開発や、レーザーを駆使して微小デブリを融解する方法などの実証実験を行っています。
これらの研究開発が実を結べば、軌道上に漂っているスペースデブリの多くを回収することも夢ではなくなるかもしれません。

【おまけ】スペースデブリを扱っている作品

「プラネテス」(漫画)

「プラネテス」では、宇宙開発が飛躍的に進んだ2070年代を舞台に、スペースデブリの回収業者として働く主人公の姿が描かれています。

この物語の中におけるスペースデブリは現実世界と同様に「長い宇宙開発の影で生まれた存在」となっており、度々宇宙と地上を結ぶ旅客機と衝突事故を起こすなど、国際的な社会問題となっています。
ちなみに、プラネテスは1994年から2004年まで漫画が連載された後、2005年にはテレビアニメ化もされています。

参考URL:プラネテス(1)(講談社コミックプラス)

「ゼロ・グラビティ」(映画)

「ゼロ・グラビティ」では、スペースデブリがお互いに(あるいは人工衛星に)連鎖的に衝突を繰り返すことで、やがてスペースデブリが自己増殖していくという仮説「ケスラー・シンドローム」が大々的に扱われています。

映画では、ケスラー・シンドロームによってスペースデブリがシャトルに衝突し、それによってシャトルが破壊されたため宇宙に取り残されてしまった人たちの運命が描かれています。
3Dを駆使した宇宙の映像は美しく神秘的な一方で、宇宙空間に放り出されることの途方もないおそろしさを克明に表現しています。

参考URL:ゼロ・グラビティ(ワーナー公式サイト)

まとめ

今回は、宇宙における環境問題とも言えるスペースデブリについて紹介していきました。

まだまだスペースデブリ問題の解決には時間がかかりそうですが、宇宙開発に関する技術は着々と進化を遂げているため、「どうせ難しいだろう」と諦めずに今後も期待していきたいですね。

一体どこの国もしくは民間企業がスペースデブリ問題解決への先陣を切るのか、はたまた国や企業の垣根を越えて一致団結した先に糸口が見えるのか、引き続き注目していきたいと思います!

参考URL:第3回スペースデブリに関する関係府省等タスクフォース大臣会合
参考URL:今後の環境省におけるスペースデブリ問題に関する取組について中間とりまとめ
参考URL:国連宇宙空間平和利用委員会スペースデブリ低減ガイドライン

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