タバコは健康だけでなく環境にも有害!?世界で強化が進むタバコ対策について知ろう

環境問題

健康や環境、社会ひいては経済に悪影響を及ぼすと言われているタバコの存在。
2005年、WHO(世界保健機関)によって「タバコの規制に関する世界保健機関枠組条約(タバコ規制枠組条約:FCTC)」が策定されて以降、世界各国ではタバコ対策が強化されるようになりました。
日本でも、タバコ税の増額や公共の喫煙所の縮小などといった対策が取られています。

さまざまな取り組みの結果、喫煙者自体は減少しましたが、いまだに街中ではポイ捨てされたタバコの吸い殻や、路上喫煙を行う人を見かけることが少なくありません。
このような行為が環境に及ぼす悪影響は、私たちが思っている以上に深刻です。

健康はもちろん環境を守るためにも、今回はタバコのポイ捨てや路上喫煙が環境に及ぼす影響、世界で強化が進むタバコ対策、そして守るべき「タバコのマナー」などについて解説していきます。

タバコの吸い殻に含まれる有害物質

ポイ捨てされたたばこの吸い殻の中には、さまざまな有害物質が含まれています。
とりわけタバコのフィルターには、栽培時に使用された農薬、除草剤、殺虫剤などの化学物質や、たばこ製造時に使用されたヒ素、ニコチン、鉛、カドミウムなどの化学物質の残留物が含まれています。

また、フィルター自体は酢酸セルロースというプラスチックの一種で作られていますが、酢酸セルロースは生物分解しにくい物質のため、完全に分解するには最大で約10年を要すると言われています。
それにも関わらず、ポイ捨てされるたばこの吸い殻の多くはプラスチックフィルターを含んでいます。

ポイ捨てされたたばこの吸い殻は、有害物質を含んだまま長年残留し、環境を汚染します。
海や川に流入した場合、さらに重大な環境問題を引き起こすおそれがあります。
たばこの吸い殻が海洋環境に及ぼす影響については、次から詳しく解説していきます。

タバコの吸い殻が海洋環境に及ぼす影響

前述したように、たばこのフィルターにはプラスチックが使用されており、それが現在深刻化している海洋プラスチック問題の一因となっています。
WHOによると、ごみのポイ捨ての中でもとりわけ多いのはたばこの吸い殻であり、道端に捨てられた多くの吸い殻は、排水を伝って海川に流れ込んでいることが分かっています。
事実、アメリカの海洋保護団体が1986年から行っているビーチの清掃活動では、現在に至るまで約6,000万本以上のたばこの吸い殻が拾われています。

海や川にたばこの吸い殻が流入すると、吸い殻に含まれる有害物質が水中に溶け出し、魚などの生物を死に至らす場合があります。
最近行われた「たばこの吸い殻と数匹の魚を同じ水の中に入れる実験」では、開始から4日後に半数の魚が死ぬという結果が出ています。
実験にとどまらず、たばこに含まれる有害物質は既に多くの海洋生物の生態系を脅かしています。

たばこの吸い殻をポイ捨てする人は、まさか自分が捨てた吸い殻が海や川に流れ込み、重大な環境問題を引き起こしているとは思っていないのかもしれません。
しかし、そのポイ捨てした吸い殻に含まれる有害物質は、吸い殻を誤飲した魚などを通して人間の体内に取り込まれる可能性もゼロではありません。
自然環境やそこに棲む生物を脅かす行為は、巡り巡って私たち人間に返ってくるのです。

タバコの煙に含まれる有害物質

たばこの煙に含まれるダイオキシン濃度は、ごみ焼却場から出る排煙よりも約5~20倍も高いことが分かっています。
また、たばこの煙は粒の大きさが2.5µm以下となっており、工場の排煙や自動車の排ガスと同じPM2.5に該当します。

PM2.5は非常に微小な粒子であるため、一度吸い込むと肺の奥深くまで入り込み、呼吸器系や循環器系に疾患をもたらすことがあります。
たばこの煙の場合、高濃度かつ一度大気に広がると長時間残り続けるため、喫煙者自身はもちろん、家族や見ず知らずの人にまで健康被害を及ぼす可能性があります。

また、大気中のPM2.5濃度が高まると、空が霞んで太陽光が十分に地上まで届かなくなり、気候変動を加速させる可能性もあります。
たばこの煙が健康や環境にもたらす害は、私たちが思っている以上に大きいのです。

タバコの生産による環境汚染

たばこの箱やたばこ本体には紙が使われていますが、当然ながらこれらの材料は「木」からできています。
また、収穫した葉タバコを乾燥させる際にも、大量の木材が使われています。
日本などでは重油を燃やして乾燥させていますが、ケニア・タンザニア・南アフリカなどのタバコ栽培地では、薪を燃やして葉タバコを乾燥させる方法が主流となっています。
1キロの葉タバコを乾燥させるために必要な薪は、およそ10キロにもなると言われています。

こうして世界では、毎年400万ヘクタール以上の森林がタバコを作るために伐採されています。
その量は地球上の喪失面積の2~4%を占めており、日本に例えると、長野県2つ分の森林が毎年地球上から失われていることになります。

また葉タバコの栽培時には、病気になるのを防ぐために大量の化学肥料や殺虫剤が使われます。
特に途上国の栽培地では、先進国では既に禁止されている有害性の高い農薬も使用されることが多く、これによって水質、土壌、労働者の健康などが汚染されています。

また、タバコ工場からは毎年およそ200万トンの固形廃棄物が排出されるなど、タバコの生産による環境被害は広範囲にわたることが分かっています。

世界のタバコ対策

健康そして環境を守るべく、世界では近年欧米を中心にタバコ対策が強化しています。
2004年、アイルランドで世界初となる国全体を全面禁煙とする法律が成立されて以降、イギリス、ニュージーランド、香港、トルコなどの国でも同様の法律が成立しました。
アメリカでも、現在半数以上の州で屋内での喫煙を全面禁止にする法律が成立しています。

価格面について、2022年4月現在日本のタバコ価格は約400~600円程度となっていますが、アメリカでは約750円、フランスでは約900円で、イギリスでは何と約1400円程度となっています。
これは価格を上げて購入しにくくすることによって、喫煙人口を減らすのが目的です。

また日本のタバコのパッケージの場合、下部に喫煙を注意する文言が記載されているのが一般的ですが、EUでは「喫煙は肺がんの原因となる」という文言と共に病床に伏している人の写真を、カナダでは「タバコの煙は乳幼児に害を与える」という文言と共に生まれたばかりの赤ちゃんの写真をパッケージに記載しています。
写真を通してタバコの有害性をよりリアルに訴えかけることで、喫煙率の低下を促しています。

日本のタバコ対策

欧米ほどの厳格さはないものの、日本でもタバコ対策は年々強化しています。
2020年4月には健康増進法の一部改正によって。屋内喫煙が原則禁止(決められた場所以外での喫煙が禁止)となる新ルールが成立しました。
これにより、飲食店には原則的に喫煙専用室、あるいは加熱式たばこ喫煙専用室が設けられることになりました。
例外として、タバコや種類を嗜むバーやスナックや小規模な飲食店(※)の場合、「喫煙目的室」または「喫煙可能室」の標識が掲げられていれば、店内全体または一部で喫煙することができます。

また、タバコ生産時に発生する環境負荷の低減に取り組む企業も増えています。
鹿児島県に拠点を置く三州産業株式会社は、葉タバコの乾燥時に発生する燃料消費を従来よりも30%削減した環境負荷低減型の葉タバコ乾燥機を開発しています。

※小規模な飲食店…客席面積100㎡以下かつ資本金5,000万円以下で、2020年3月31日までに開業している店舗に限る。

まとめ

とある調査によると、喫煙者がタバコを吸い始めた理由の多くは「かっこいいと思ったから」というものだそうです。
たしかに映画の登場人物や人気ミュージシャンがタバコをくわえている姿を見ると、つい憧れを抱いてしまうのも無理はありません。

しかし、タバコの煙によって周囲の人の健康を害したり、ポイ捨てしたタバコの吸い殻によって環境が汚染されたりするのは、決してかっこいいことではありません。
むしろSDGs達成に向けた機運が高まり、環境に配慮することが一種のトレンドとなっている昨今では、タバコによる健康被害や環境破壊は明確に「かっこ悪いこと」になりつつあります。

喫煙者の多くは普段からしっかりマナーを守られているとは思いますが、「決められた喫煙場所を守る」「歩きタバコやポイ捨てはしない」などの基本的なルールがより徹底されることを願いたいですね。

参考URL:タバコと環境汚染(医療法人鉄蕉会)
参考URL:たばこの吸い殻は最悪のプラスチック汚染物質、フィルターでがん防止できず(CNN)
参考URL:知っておきたい「たばこの新ルール」(JT)
参考URL:葉たばこ乾燥機(三州産業株式会社)

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