地球温暖化が「桜の咲かない春」を招く?異常気象が日本の風物詩に与える影響とは

環境問題

近頃は厳しい寒さを感じる日も減り、少しずつ春の訪れを感じられる時期になってきましたね。
そんな春の風物詩といえば、何と言っても桜。
満開の桜並木とその下にずらりと並ぶ出店の数々は、日本に暮らす人々にとっての原風景と言っても過言ではありません。
ここ1、2年は新型コロナウイルスの影響により、お花見シーズンになっても出店の姿を見かけることが減ってしまい寂しい限りですが、とにかく今は感染対策をしっかり行い、以前のように気兼ねなくお花見を楽しめる日が一日でも早く来ることを願いたいですね。

そんな桜ですが、「年々開花が早まっているような気がするな…」と思ったことのある方は多いのではないでしょうか。
筆者自身、4月の小学校の入学式には満開の桜が咲き誇る中で参加した記憶があったのですが(約20年前)、近年では4月初めに桜の木を見ると、「もう新緑が出始めている!」と思うことが増えているように感じます。

実際、気象庁が発表している東京の桜(ソメイヨシノ)の開花日データを見ると、2000年代までは3月下旬~4月初旬頃に開花する年がほとんどだったのに対し、2000年代以降は3月中旬~3月下旬頃に開花する年が増えていることが分かります。
一見すると大きな変化は無いように思えても、緩やかに、しかし確実に桜の開花時期には変化が表れ始めているのです。
その理由は、他でもない地球温暖化にあると考えられています。

今回は、地球温暖化が桜の開花時期に及ぼす変化とは一体何か、今後の開花時期は一体どうなっていくのかなどについて考えてみましょう。

そもそもなぜ「桜は春に咲く」のか

桜の開花時期と地球温暖化の関係について掘り下げる前に、「そもそもなぜ桜は春に咲くのか」という点について見ていきましょう。

基本的に、日本各地の桜の開花予想日を示す「桜前線」は、3月中旬頃に西日本から北上を初め、関東、東北へと移り、5月上旬に北海道に到着します。
花が散った桜の木は、盛夏(7~8月)の頃には葉の付け根に花芽をつけ、そのまま一時的に成長をストップし、休眠に入ります。

そうして夏が過ぎ、秋が深まり冷たい風が吹くようになると、桜の木から葉が落ちたことによって冷たい空気にさらされた花芽が、徐々に眠りから覚め始めます。
ちなみに、この冬の寒さによって目を覚ます過程のことを「休眠打破」と言います(某眠気覚ましドリンクを思い起こした方は多いのではないでしょうか)。

その後、冬が終わって春の訪れが近づくと、気温の上昇とともに花芽はつぼみへと生長し、桜の木は再び花を咲かせるのです。
桜が毎年咲くためには、冬の寒さが必要不可欠だということが分かりますね。

地球温暖化が桜の開花時期に与える影響

環境省、文部科学省、気象庁などが2018年に共同で発表した気候変動の観測レポートによると、日本の平均気温は地球温暖化によって、100年あたり約1℃のペースで上昇していることが分かっています。
特に東京の都市部などでは、ビルやアスファルトの蓄熱や人間活動による排熱の影響も大きいと言われています。

このような気温上昇にともない、寒い冬が終わって春が来るまでの間隔が早くなっているため、桜の花芽も早々に休眠打破を終え、年々開花時期が早まっているのではないかと考えられています。
特に昨年は3月11日に広島で開花したのを皮切りに、東京では3月14日、大阪では3月19日と、歴史的に見ても早い開花時期を記録しました。

一方で、地球温暖化の影響によって逆に開花時期が遅れる場合もあります。
その理由は、気温上昇による「暖冬」です。
実際、記録的な暖冬となった2020年は花芽が中々目覚めず、鹿児島などの暖かい地域では比較的遅い開花となりました。
地球温暖化が進行すると、北の寒い地域では開花が早まり、南の暖かい地域では開花が遅れる傾向が加速するということですね。

そして実は、近年では開花時期が早まることよりも、遅くなることの方が問題だと指摘されています。
次は、その理由について見ていきましょう。

桜の開花時期が「早まる」よりも「遅れる」方が危機的な理由

前章では、地球温暖化は桜の開花時期を早めるだけでなく、遅らせる場合もあると解説しました。
とはいえ、たとえ暖冬の年でも東北や北海道といった北の地域では十分に気温が下がるため、現時点では休眠打破から満開になるまでのペースに大きな変化は無いと言われています。

しかし九州などの南の地域では、いまや休眠打破が進むかどうかギリギリの水準まで気温が上がっているそうです。
ウェザーニュースが発表した「都道府県ごとの開花から満開までの日数データ」を見ると、北の地域では休眠打破から満開になるまでの日数が毎年3~6日であるのに対し、南の地域では5~11日と明らかに長いことが分かります。

桜における「満開」とは80%程度の花が開花している状態を指しますが、暖冬によって休眠打破がうまくいかないと花芽一つ一つの生長にバラつきが生じ、結果的に満開といえる状態になるまで時間がかかってしまうと考えられています。
要するに必要以上に暖かい気候が続くと、ウトウトした状態のまま、うまく生長できない花芽が増えてしまうということです。

今後、桜が咲かない未来は来るのか

高温化によって桜の開花が遅れる傾向が続くと、早くて100年後には桜の花が咲かない地域が出てくる可能性があります。
実際、例年に比べて気温が高めだった2007年の八丈島では、桜がなかなか開花せず、そのまま満開になることなく葉桜になり、ついには散ってしまったことが報告されています。
当時、この八丈島のケースは「珍しいケース」だと考えられていましたが、このまま地球温暖化が進めば、「桜の咲かない春」が当たり前になってしまうかもしれないのです。

ウェザーニュースは2009年に、2010年~2110年までの桜(ソメイヨシノ)の開花をシミュレーションした「Sakura Simulator 2009-2110」を発表しています。
そのうち、日本の平均気温が2~3℃上がった場合を想定した「気温上昇平均シナリオ」のシミュレーションによると、北の地方では今より2~3週間開花が早まり、南の方では1~2週間遅くなるという予想結果が出ています。
同シナリオは、将来的に九州、四国、東海地方の一部では将来的に桜が開花しなくなる、または開花しても満開にならずに散るとも予想しています。

さらに、日本の平均気温が4~7℃上がった場合を想定した気温上昇最大シナリオ」では、八丈島、宮崎県、静岡県、東京都の順で桜が咲かなくなるとの予想結果が出ています。
なお、日本の平均気温が0.2~0.3℃上がった場合を想定した「気温上昇最小シナリオ」では、桜の開花時期のズレは一日程度に留まるとの結果が出ています。

そしてウェザーニュースは2月16日、春の訪れに向けて「2022年の桜開花予想」を発表しました。
この予想によると、北海道、東北、関東甲信越、北陸、近畿、中国地方の開花時期は「平均並~非常に早い」となっており、東海、四国、九州地方では、「平均並~やや遅い」となっています。
開花予想日トップは3月19日となっており、東京で全国に先駆けて開花すると考えられています。

桜の開花は毎年待ち遠しいものですが、温暖化が進行していることをふまえて今年の開花予想を見ると、なんとも複雑な気持ちになってしまいますね。
日本の平均気温を上げないためには、政府が国を挙げて取り組むことももちろん重要ですが、何より大切なのは私たち一人一人が環境に配慮した行動を心掛けることです。
春の風物詩、そして私たちの原風景である桜を未来に残すためにも、できることからはじめてみませんか。

まとめ

地球温暖化が開花に与える影響を知ると、今年からはより一層桜を慈しむ気持ちが強まりそうです。
少しずつ寒くなくなってきているとはいえ空気はまだ冷たく、朝目覚めるのが辛い日はまだ続きそうですが、筆者も桜の花芽のように「休眠打破」し、春からまた気持ちを新たに太陽光発電や環境意識の普及に取り組んでいきたいと思います。

参考URL:さくらの開花日(気象庁)
参考URL:桜開花予想NEWS(ウェザーニュース)
参考URL:今年は見られなかった、温暖化による”本当の異常現象”とは(ウェザーニュース)
参考URL:桜開花に寒さも大切(気象キャスターネットワーク)
参考URL:100年後には都内で桜が咲かなくなる?1万台のPCつないで予想(ITmedia NEWS)

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