FCV(水素自動車)は環境に優しい?優しくない?気になる点を徹底調査!

環境問題

EV(電気自動車)に次ぐ「環境負荷の少ない自動車」としてここ数年間で注目を集めつつあるFCV(水素自動車)ですが、EVに比べるとその認知度はまだまだ低いと言えます。
またそれだけではなく、近年では「FCVはむしろ環境に悪い!」という反対意見もいくつか挙げられています。
再生可能エネルギーである水素を燃料としているはずのFCVが環境に悪いと言われる理由とは、一体何なのでしょうか?
それを知るためにも、今回はFCVの歴史からEVとの違い、そしてFCVに乗る上でのメリット、デメリットについて考えていきたいと思います。

日本におけるFCVの歴史

日本国内におけるFCV開発の歴史は意外にも古く、1970年代には東京都市大学の前身となる武蔵工業大学にて水素エンジンを搭載した自動車の研究が行われていました。
その後1990年代にはマツダ、BMWなどの大手自動車メーカーも開発事業に参入し、マツダは2003年、BMWは2006年に水素エンジンを開発しています。

そして2014年には、トヨタが世界初の量産型FCVである「ミライ」を発表しますが、この初代ミライは「いち早く量産型FCVを世に出す」という部分に重点を置いて開発されたため、肝心の性能に関してはまだまだ改良の余地が多かったため、大々的なFCV普及には至りませんでした。
しかし、2020年12月に発売が予定されている「新型ミライ」では、初代におけるデザイン面、走行性能、乗車時の快適さなどが大幅にアップデートされており、今後のFCV普及の重要な足掛かりとなるのではないかと予想されています。

EV(電気自動車)との違い

FCVは「Fuel Cell Vehicle」の略となっており、ガソリンを用いる通常の自動車と違い、水素と酸素をエネルギー源として走る点が特徴です。
対してEVは「Electric Vehicle」の略となっており、電気をエネルギー源として走る点が特徴となっています。

どちらも「環境に配慮して開発された、ガソリンを一切使用しない車」という点においては共通していますが、一般認知度で言うと現時点では圧倒的にEVの方が勝っているのが現状です。
EVは日産、三菱、ジャガー、ポルシェなど国内外問わず多くのメーカーが市販化しているのに比べ、FCVは今のところ市販化しているメーカーが少ない点も、認知度の差に大きく影響していると言えるでしょう。

また、EVの場合は電気インフラが整っているため各地に充電スタンドを設置しやすいのですが、FCVの場合は水素ステーションを建設する前に燃料となる水素を確保する必要があるため、この点に関しても遅れを取っている点は否めません。
とはいえ前述したトヨタの新型ミライが発売された暁には、水素ステーションも今以上に見直しや整備が行われ、建設数も増加するだろうと予想されています。
そのような流れもあるため、この点に関しては暫し今後の動きに注目したいですね。

FCVのメリット

走行時の有害ガス排出量がほぼゼロ

前述したEVはガソリン車やディーゼル車に比べてCO2排出量が少ない点が特長ですが、それでも走行時には若干のCO2を排出してしまいます。
対してFCVの燃料源となっている酸素と水素は合わさればただの水となり、走行時は水蒸気のみが排出されるため、CO2排出量はほぼゼロだということが分かっています。

エネルギー効率が高い

FCVの燃料電池におけるエネルギー変換効率は、なんとガソリン車の倍にもなると言われています。
そのため今後さらに研究開発が進めば、EVのようにこまめな充電をしなくても、ガソリン車以上に長距離を走行することも実現できる可能性があります。
実際、先ほどの紹介したトヨタの新型ミライは約850kmの航続距離を実現しており、これは東京から大阪まで一度も水素を補給せずに走行しても、まだ余裕を残せる設計となっています。
FCVで日本一周ができる未来も、そう遠くないのかもしれませんね。

静音性が高い

ガソリン車やディーゼル車の場合は少なからずエンジンの轟く音が発生しますが、FCVの場合はモーター駆動となっているため、振動と騒音の発生を最小限に抑えることが可能となっています。
それにより発生するメリットには、

・車内での会話がクリアに聞こえる
・車内で眠る乳幼児を起こす心配が減る
・閑静な住宅街を走っても騒音による迷惑を住民にかけずに済む

などが挙げられます。
乗っている人が快適になるだけでなく、周囲の人々にもストレスを与えない点は、まさにFCVの特長だと言えるでしょう。
また、「あまりに静かすぎでもなんだか味気ないなあ…」と感じてしまう人向けに、近年では走行時の静音性の高さはそのままに、アクセルを踏んだ時だけ敢えて加速音が出るように設計されたFCVも登場しています。

FCVのデメリット

製造コストが高い

現在、FCVに欠かせない燃料電池の触媒には白金(プラチナ)が用いられています。
しかし白金は非常に希少価値が高く、産業界における流通量が少ない「レアメタル」に分類されているため、必然的に車全体の製造コストも高くなるというデメリットがあります。
製造コストが高くなれば必然的に販売価格も高くなってしまうため、この点がFCVの普及を難しくしている一因となっています。
ちなみにFCVには国の補助金制度が適用されているため、購入する際にはそれを活用することもできますが、それでも一般的なガソリン車に比べるとやや高額となってしまうことは心に留めておくと良いでしょう。

製造時にはCO2が発生する

先ほど「FCVは走行時にCO2を排出しない」と述べましたが、実は水素は石油や天然ガスなどの化石燃料を基に作られるのが一般的となっています。
そのため、いくら水素からはCO2が発生しないとしても、化石燃料の採掘時や水素にするための改質時にはCO2が排出されているため、この点に対し一部からは「結局エコじゃないのでは?」という疑問の声が挙がっています。
また、水素を水素ステーションに備蓄する際に改質したり、液化した水素を水素ステーションまで輸送する過程においても微量のCO2が発生するため、「環境負荷ゼロのエコカー」と謳うにはまだまだ課題が残っているのは否めないと言えるでしょう。

これに対し「走行時に有害ガス類を排出しないのであればガソリン車よりはエコだろう」という見方もできますが、環境省による「気候変動の国際交渉」において「2050年までに世界で50%の地球温暖化ガスを削減する」と議論されているように、より環境に配慮しCO2排出量を減らすのであれば、製造方法から見直すことは必要不可欠なのかもしれません。

静音性が高い反面歩行者が気付きにくい

静音性が高いところはFCVの大きなメリットである反面、あまりにも静かなために周囲に存在を察知されにくいという点もあります。
そのため、気付かずに近づいてきた歩行者と接触事故を起こしてしまう可能性を懸念する声も少なくありません。
せっかく環境負荷を減らすために開発されたFCVが交通事故リスクを高めてしまっては、本末転倒と言えるでしょう。
とはいえこの点に関しては各メーカーも課題として認識しているため、今後省エネ性に限らず安全性も向上したFCVが登場することに期待したいですね。

まとめ

今回はFCVに関する気になる点について、なるべくフラットな視点からチェックしていきました。
一時は開発事業全体の低迷が囁かれながらも近年また新たに注目を集めているFCV界隈ですが、現時点ではまだまだいくつかの課題が残っているのも事実です。
そのため、「環境負荷ゼロ」「事故リスクゼロ」「低コスト」を兼ね備えたFCVが登場するのは、おそらくもう少し先になることでしょう。

しかし、この数年間でその性能が向上していることは確かなため、あまり穿った目で見るよりは、更なるアップデートを楽しみに待つ方が得策なのかもしれません。
FCVに関する新たな情報が分かり次第、また当コラムでも取り上げていきたいと思います。

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