宇宙で活躍する太陽電池のこれから

太陽光発電

太陽光発電システムの根幹を成しているといっても過言ではない太陽電池ですが、
その活躍の場は地上に留まらず、宇宙空間にも及んでいることをご存知でしょうか?太陽電池の特性を活かして既に実用化されているシステムもあれば、現在進行形で開発が進んでいるシステムもあり、その秘めた可能性はまだまだ未知数だと考えられています。

そこで今回は、いつものコラムでは住宅用システムに向けがちな視点を地球の外に移し、宇宙における太陽電池活用のこれまでとこれからを見ていきましょう。

地上用太陽電池と宇宙用太陽電池の違い

同じ太陽電池でも、地上で使う場合と宇宙で使う場合とでは環境が全く異なるため、スペックにも多少の違いが生じます。
意外にも、変換効率においては地上用の方が高いと言われており、宇宙用が基本14~18%であるのに対し、地上用では高くて20%越えを実現しているものもあります。

とはいえ、これは地上と宇宙では受ける太陽光スペクトルの量が違う点が考慮されているからであり、実は宇宙用の場合は変換効率よりも、耐久性に重きを置いて開発されています。
中でも特に重視されている耐久性については、以下になります。

熱光学特性

これは地上用も同じですが、太陽電池は温度が上昇するほどに発電効率を落としてしまうという性質を持っています。
地上の場合、温度は一定ではない上に空気があるため熱を放出することができますが、宇宙空間は真空なため、一度持ってしまった熱を放出するのは中々難しいです。
そのため宇宙用太陽電池には、あらかじめ熱を吸収しないようなコーティングや工夫が施されています。

耐放射線性

宇宙空間には常に放射線が満ちていますが、もし何も工夫を施されていない太陽電池セルの基板が放射線を浴びてしまうと、基板に欠陥が生じ、電気出力の低下を招いてしまう恐れがあります。

そのような影響を極力抑えるべく、宇宙用太陽電池はセルの基板が非常に薄く作られています。
薄くすることで基盤にかかる負荷や欠陥の発生を防ぎ、同時に長寿命化と軽量化も実現することができます。

しかし、太陽電池は薄ければ薄いほどエネルギー変換効率も落ちてしまうので、宇宙用にはなるべく高効率な単結晶シリコン、あるいは単結晶化合物(GaAs系統)などが主に使用されています。

耐環境性

宇宙空間に持ち運ばれる機器は、どんなものでも必ず厳正な試験を通過する必要があり、それは太陽電池も例外ではありません。
試験では打ち上げ後の宇宙環境(放射線、振動、紫外線など)だけではなく、打ち上げ前の地上の湿気などにも耐えうるかどうかが審査されます。

あらゆる環境にも適応できる耐久性は、宇宙で活躍する太陽電池にとっては欠かせないと言えるでしょう。

高信頼性

地上用太陽電池が故障した場合は、すぐ業者に点検を依頼することができますが、宇宙用太陽電池の場合はそう簡単にはいきません。
一度宇宙に運び込まれてしまうと、もし故障したとしてもすぐ修理を行うことは難しく、とはいえそのまま放置してしまうと、太陽電池を搭載している人工衛星の機能が停止してしまう恐れがあります。

そのため宇宙用太陽電池は、あらかじめ故障が起きにくいように研究を重ねた上で設計、製造されています。
今ではすっかり多くの人工衛星に用いられている太陽電池ですが、その信頼性を高めた背景には、多くの技術者たちの努力があったということが分かりますね。

宇宙で実際に活躍する太陽電池

人工衛星

前章でも少し触れましたが、宇宙における太陽電池の活用方法を語る上で最も欠かせないのは、人工衛星と言っても過言ではありません。
今から60年以上前の1958年、初めて太陽電池を搭載した人工衛星である『ヴァンガード1号』が宇宙に打ち上げられました。
もっとも、人工衛星自体はその1年前の1957年に開発されていたのですが、当時はまだ長寿命の電池が存在していなかったため、世界初の人工衛星はわずか3週間でその活動を終えてしまいました。

一方、ヴァンガード1号はなんと6年以上もの間宇宙空間での活動を続け、結果的に「太陽電池がどれだけ画期的かつ高性能か」ということを世に知らしめるに至ったのです。

現在でも、太陽電池は人工衛星のエネルギーとして用いられていますが、初の実用化から50年以上シリコン太陽電池が主に使われていたのに対し、
2000年以降は多接合型の太陽電池がメインになったりと、その活用方法や性能は少しずつ変化しているようです。

国際宇宙ステーション(ISS)

国際宇宙ステーション(International Space Station/以下、ISS)は、世界初の「宇宙における研究開発のための有人施設」として1998年に打ち上げられました。
その時から今日に至るまで、ISSを運用するための電力はすべて太陽光発電でまかなわれています。

ISSといえば、ソーラーパネルを両腕いっぱいに広げて飛ぶ巨大な鳥のような姿が特徴的ですが、実はあれはソーラーパネルではなく、「太陽電池パドル」と呼ばれる電力変換装置ということをご存知でしたか?
ソーラーパネルが、太陽電池を組み合わせて作ったパネル一枚一枚を指すのに対し、太陽電池パドルは「太陽電池を展開させるための仕組み及びその他の付属物」を含めた全体のことを指します。

ISSが太陽光に照らされる軌道上に乗っている日中の間、太陽電池パドルは発電を行い、ISSの各設備に電力供給を行っています。
そして、昼間に使い切れなかった電力は太陽光の軌道上を外れて発電ができなくなる夜間に使うため、蓄電池に貯めておきます。
ISSの軌道上では、1日の間に昼と夜が16回繰り返されるため、ISSは太陽光発電と蓄電池を交互に活用して電力を補っているということになります。

宇宙にあるただ一つの有人施設のための電気を、宇宙ならではのエネルギーである太陽光で生み出すというのは、なんだかロマンを感じますね。

今後実現するかも?太陽電池の新たな挑戦と課題

宇宙太陽光発電システム(SSPS)

前章では「ISSのための電力供給を行っているのは太陽光発電」だとお話ししましたが、この場合はあくまでも宇宙空間のみで完結しています。
それとは別に「宇宙に太陽光発電システムを設置し、そこで発電した電気をマイクロ波に変換して地球上に送る」という、宇宙太陽光発電システム(Space Solar Power System/以下、SSPS)を実現しようという構想も、かねてより提唱されています。

このアイデア自体は、実は1968年頃から存在しているものの、財政やその他の政策との関係から継続的な研究を行う国は多くありませんでした。
一方、日本では1980年代から今日に至るまでJAXA (Japan Aerospace Exploration Agency) や経済産業省による組織的な研究が続けられ、
2030年代には実用化できることを目標に掲げられています。

この計画が実現すれば、化石燃料の運用を大幅に減らせると言われていますが、そのためには莫大なコストがかかるとも言われているため、現状ではSSPSに難色を示す専門家も少なくありません。
費用面の課題をどう解決していくかという点こそ、SSPS実用化への鍵と言っても過言ではないでしょう。

宇宙エレベーター

古くからSF映画やアニメの中に度々登場する宇宙エレベーターですが、あくまでも空想の産物だと言われており、長らく現実的ではないと考えられていました。
しかし21世紀に入ってからは、宇宙機器に関する研究や技術開発が飛躍的に進んだため、「もしかしたら宇宙エレベーターも実現できるのではないか」という兆しが見えてきています。

そして、宇宙エレベーターの最大規模の駅になると考えられている「静止軌道ステーション」には、前述したSSPSを設置するという構想も練られています。
それらの研究をより進めるため、近年では宇宙エレベーター協会(Japan Space Elevator Association/JSEA)が設立され、実用化への道を着実に歩んでいます。

宇宙エレベーターが実現した暁には、物資の輸送がスムーズになるだけではなく、民間人が気軽に宇宙に行けるようにもなるかもしれませんね。

まとめ

宇宙で活躍する太陽電池について見ていきましたが、想像以上にあらゆる場面で使われているということが分かりましたね。
太陽電池はこれからも、宇宙開発に重要な存在として深く関わっていくでしょう。

当社が主に扱っているのは地上用システムのみですが、いずれは宇宙における太陽光発電システムの本格運用にも貢献できるよう、今後もまい進していきたいと思います。

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