相次ぐ新電力会社の倒産や撤退…その理由を徹底解明!

エネルギー(再エネ・化石燃料etc.)

当コラムページは2年前、「新電力会社って何?従来の電力会社から乗り換えるメリット・デメリットとは?」というコラムをアップしましたが、2022年以降、新電力を取り巻く状況は大きく変わってしまいました。
というのも、今年に入ってから新電力会社の倒産や事業撤退が相次いているのです。

代表的な事例としては、新電力会社の中でも多くの顧客を獲得していたエルピオでんきの電気小売事業からの撤退です。
エルピオでんきの撤退は約14万件に影響を与え、多くの家庭が戸惑いと混乱に見舞われました。

帝国データバンク(TDB)の調査によると、2021年4月までに登録のあった新電力会社のうち、1割超にあたる104社が2022年6月8日までに電力供給の停止や事業撤退をしたことが分かっています。
一体なぜ、このような事態となっているのでしょうか。

そこで今回は、新電力会社の倒産や撤退が相次いでいる理由について考えていきたいと思います。

新電力の倒産・撤退が相次ぐ理由

2020年度冬季から続く電力市場の価格高騰

2020年12月中旬、日本列島に「数年に一度レベルの大寒波」が直撃し、2021年1月前半まで長期間断続的に続きました。
この大寒波により日本全国では暖房利用などによる電力需要が増加し、一部地域では需給が厳しくなる事態も発生しました。

2020年12月中旬には、電力需要が過去5年の中でも高い水準に達しましたが、12月下旬には一旦落ち着き、例年並みとなりました。
また、2022年12月24日には長らく稼働を停止していた九州電力の川内原子力発電2号機が再稼働し、安定的な電力供給が可能となりました。

しかしその矢先、今度は関西電力の所有する石炭火力発電所がトラブルにより停止してしまいます。
さらにLNG生産国の供給設備トラブルによって、海外からのLNG調達が困難になりました。
この状況を乗り越えるために政府が取った方法は、火力発電の発電量を減らすなどしてLNGの在庫を一定に保つ「燃料制約」を実施することでした。

この影響によって、日本卸電力取引所(JPEX)では常に「電力売り切れ状態」となり、結果的に電力取引価格の高騰につながりました。
大手のように自前の発電所を持たず、JPEXを通して大手電力が余らせた電力を安価で仕入れている新電力は、この事態に大きなダメージを受け、倒産や撤退が相次ぎました。

2022年2月に始まったウクライナ侵攻

2022年2月24日、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始しました。
アメリカやヨーロッパなどの西側諸国はロシアのこの行動を強く批判し、さまざまな方向から経済制裁を加えました。
そのうちの一つが、エネルギー大国であるロシアからの石油輸入の停止です。
西側諸国で構成されるG7の一員である日本も、足並みを揃えるためにロシア産石油の禁輸に踏み切っています。

とはいえ、日本は石油の大半を輸入に依存しており、石油輸入国割合のうちロシア産石油は約4%を占めています。
数字だけ見ると、それほどロシア産石油への依存度は高くないように思えます。
しかし、日本としては中東への石油依存度を下げるための足掛かりとしてロシアを調達先の一つとしていたため、禁輸の決断に対しては「エネルギー安全保障上の戦力に影響を及ぼすのではないか」という懸念の声も上がっています。

そして、エネルギーの調達先が一つ無くなることは、必然的に燃料価格の高騰につながり、結果として新電力が倒産または撤退する一因となっています。

2022年3月の電力需給ひっ迫

2022年3月16日、福島県沖で発生した最大震度6強の地震によって、東北・関東エリアにある6つの石炭火力発電所が稼働を停止させました。
そこに追い打ちをかけるように、3月下旬には10年に1度レベルの「季節外れの寒波」が到来し、暖房利用などによる電力需要の増加によってJPEXの市場価格が高騰しました。

このような事態を受け、政府は2022年3月22日に東京電力および東北電力管内に対し、「電力需給ひっ迫警報」を発令しました。
結果として大規模な停電などには至りませんでしたが、一時は非常に緊迫した状況となっていました。
そしてこの事態は、新電力の経営にも大きなダメージを与えたのです。

【2021年4月~2022年6月】倒産・撤退した新電力の一例

アンフィニ

アンフィニは、太陽光発電システム製造事業のかたわら、電力小売事業も手掛けていた会社です。
一時は166億円近くの売上高を上げることもありましたが、事業環境の変化や2021年以降の電力取引価格の高騰を受け、2021年9月に民事再生法の適用を申請し、倒産しました。
しかし、その後は「ジャパン電力」として再建し、料金単価を値上げする形で新電力事業を再開しています。

ホープエナジー

ホープエナジーは、全国の地方自治体向け支援などを手掛けている「ホープ」による新電力です。
元々はホープの電力事業という形で経営されていましたが、2021年以降の電力取引価格高騰を受けて業績が悪化。
分社化して再建を図りましたが、結局2022年3月に破産しました。

ウエストでんき

ウエストでんきは、再生可能エネルギーを軸とした事業を展開している「ウエストホールディングス」による新電力です。
主に法人向けの電力小売事業を展開していましたが、電力取引価格高騰の影響を受け、2022年4月末で新電力事業から撤退しました。

エルピオでんき

冒頭でも述べたように、多くの顧客を抱えていたエルピオでんきですが、電力取引価格高騰の影響を受け、2022年4月をもって新電力事業を停止しました。
なお会社自体は存続しており、プロパンガス、都市ガスなどの事業は継続しています。

アンビットエナジージャパン

アンビットエナジージャパンは、エネルギーのネットワークビジネスを展開するアメリカ系企業「アンビットエナジー」の日本法人です。
6万件近くの契約を獲得していましたが、電力取引価格高騰の影響を受け、2022年5月をもって日本国内の電力小売事業から撤退しました。

【2022年7月時点】新規受付を一時的に停止している新電力の一例

楽天でんき

楽天でんきは、ウクライナ情勢による電力取引価格高騰の影響を受け、2022年3月より新規受付を一時的に停止しています。
また、2022年6月からは料金の値上げを実施しています。

Loopでんき

基本料金ゼロ円、解約料金もゼロ円といったプランが人気のLoopでんきですが、昨今の電力調達事情を憂慮し、2022年4月より新規受付を一時的に停止しています。
また楽天でんきと同様に、2022年6月からは料金の値上げを実施しています。

まちエネ

人気コンビニチェーンのローソンと三菱商事が共同で設立したまちエネは、pontaポイントが貯まる、ローソンの商品と交換できるクーポン券が貰えるなどのサービスが人気です。
そんなまちエネですが、ウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰の影響を受け、2022年3月より新規受付を一時的に停止しています。

シン・エナジー

再生可能エネルギーに力を入れ、全国65カ所に自社発電所を保有するシン・エナジー。
しかしウクライナ侵攻による国際的な資源価格高騰の影響を受け、2022年3月より新規受付を一時的に停止しています。

丸紅新電力

2002年より電力小売事業に参入し、豊富な自社発電所を所有する丸紅新電力ですが、燃料価格高騰により電力調達が先行き不透明になっていることを受け、2022年4月より新規受付を一時的に停止しています。

新電力の倒産・撤退や電気代高騰に左右されないためには

今まさに新電力を利用している方は、ここまで読んで「うちが使っている新電力ももうすぐ倒産するかもしれない…」と不安を感じたのではないでしょうか。
ただ、新電力が倒産または撤退した場合、電力会社はそのことを契約解除の15日前までに利用者に通知する義務があります。
そのため、いきなり電気が使えなくなるといったことはないので、その点に関しては安心です。

とはいえ、次に契約する電力会社はできるだけ早めに探した方が良いでしょう。
ただし、国際的にエネルギー価格が高騰している今は、どこの電力会社と契約しても、ある程度の値上げは避けられない可能性があります。

電力会社の経営状況や電気代高騰に左右されないためには、電力を自給自足できる太陽光発電システムや蓄電池の導入を考えるのも一つの手かもしれません。
もし太陽光発電システムや蓄電池の導入を検討される場合は、長年太陽光発電システムや蓄電池の販売を手掛けている当社まで、お気軽にお問い合わせください。

まとめ

新電力の倒産や撤退が相次ぐ理由は、電力取引価格の高騰、2022年3月の電力需給ひっ迫、そしてウクライナ情勢にあることが分かりました。
電気は生活に欠かせない存在だからこそ安心して使いたいものですが、今の状況を見ると、なかなかそうはいかないのが現状ですね。

今後の電気料金の変動に不安がある方、自家消費で電気料金の負担額を下げたい方は、どうぞ当社までご相談ください。
長年再生可能エネルギーに関する事業に携わっている会社として、真摯に対応させていただきます。

参考:「新電力会社」事業撤退動向調査(6月) – 帝国データバンク
参考:新電力比較サイト

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