江戸時代は「エコ時代」だった!現代にも活かせる暮らしのヒント

エコな取り組み

2015年にSDGsがスタートして以降、限りある資源を効率的に活用する「循環型社会」への関心が高まりつつあります。
そんな中、「実は今よりずっとエコな社会を実現していたのでは?」と、今改めて江戸時代の暮らしが注目を集めています。

一体、江戸時代のどういった点がエコだったのでしょうか?
今から約420~150年前の社会から、現代社会に生かせる暮らしのヒントを探っていきましょう。

江戸時代がエコな理由➀植物資源に支えられていた

鎖国により資源の輸出入が無かった江戸時代の日本は、人々の暮らしに必要な物資の大半を植物資源に依存していました。
また植物は太陽光、CO2、水による光合成で成長するため、必要なエネルギーも太陽エネルギーだけでまかなわれていました。

つまり、意識的に循環型社会を実現したというよりは、あらゆる工夫を凝らして再利用可能な植物資源を最大限活用する中で、自然と独自のリサイクルシステムが構築されていったと言う方が正しいでしょう。
そのため、江戸時代の生活には化石燃料に頼らずに生きるための知恵と経験が詰まっており、現代における循環型社会を実現する上で非常に理想的な見本となっています。

では、具体的にどのように植物資源を利用していたのでしょうか。
一つは、「行灯(あんどん)の油」です。
江戸時代の照明といえば、小皿に注いだ油に火を灯す主流となっており、この行灯用の油には、ごま油、えごま油、菜種油、綿実油などの植物油が主に利用されていました
ちなみに他には、イワシ、クジラ、サンマなどの「魚油(ぎょゆ)」も利用されていたそうです。

江戸時代の人々は、日中は自然光で生活し、行灯を点けるのは主に夜のみでした。
その上、行灯は照明と言うには頼りなく、微かな明るさしかありませんでしたが、当時の人々にとっては
「夜=寝るだけ」という常識があったため、十分な明かりが無くとも全く問題なかったそうです。

次に、「日用品や堆肥づくり」です。
江戸時代の稲作では、収穫した藁の約20%を日用品づくりに、約50%を堆肥に、残りの約30%を燃料その他に充てていました。
つまり、収穫した分を少しも廃棄することなく、100%活用していたのです。

この時につくられたものは、衣食住の様々な場面で役立ちました。
具体的には、以下の通りです。

・衣食住の「衣」…日除け用の編笠(あみがさ)、雨具用の蓑(みの)、草履(ぞうり)など
・衣食住の「食」…米俵、鍋つかみ、釜敷きなどの台所用、藁苞(わらづと)納豆づくりなど
・衣食住の「住」…草屋根、畳、土壁の材料など

江戸時代の稲作農家は、農閑期にこれらの日用品を自家用につくると共に、販売用にもつくって収入源としていました。

江戸時代がエコな理由②徹底したリサイクル文化

江戸時代は物資が限られており人々が所持できる分も少なかったため、衣類も食器も徹底的にリサイクルして使う文化が定着していました。
とはいえ決して無理にリサイクルをしていたわけではなく、楽しみながらリサイクルしていたようです。

例えば着物などは、帯や小物を組み合わせて変化をつけることでお洒落に気回していました。
また、江戸時代は古着屋がかなり多く、市場に出回っている着物の大半は古着でした。
古着屋では着物だけでなく端切れなども扱っていたので、それを襟や裏地などに縫い付けて個性を出していたそうです。

何度も着回してさすがにほつれや擦り切れが目立つようになってきた着物は、今度はおむつや雑巾として
リサイクルされ、ボロボロになるまで使い切った後はかまどや風呂釜などの燃料にも使われました。
それで終わりかと思いきや、燃やし尽くした後の灰さえも、農業、酒造、陶器づくりに利用されるなど、限界まで使い抜かれていました。

また江戸時代では、壊れたものを直してくれる「修理屋」が発達していました。
修理屋にはそれぞれ専門があり、壊れた陶器を修理する焼接ぎ(やきつぎ)屋、提灯張り替え屋、破損や汚れで見えづらくなった鏡を復活させる鏡研ぎ(かがみとぎ)屋などがいたそうです。
そのため、何かが壊れたら専門の修理屋まで持っていき修理してもらい、また使えなくなるまで使い込むというのが江戸時代の常識でした。

このように、「これ以上は修理できないのでは…」というレベルまで使い切ってもなおゴミにしないところが江戸の凄いところです。
前述した修理屋だけではなく、紙くずや髪の毛までありとあらゆるものを買い取る業者も江戸時代には存在しており、新しい商品づくりに活かされていたそうです。

江戸時代がエコな理由③食材は「必要な時に必要な分だけ」

江戸時代の人々は魚屋さんや八百屋さんに買い物に行くのではなく、行商人が家まで売りに来る魚、豆腐、野菜、などをその都度買っていたため、食材を一気に買い溜める必要がありませんでした。
もちろん今のような使い捨て容器は存在せず、買う際は自前の容器で量り売りしてもらっていたそうです。

このように江戸時代では食材は「必要な時に必要な分だけ買うもの」でしたが、これは決してエコを意識していたわけではなく、一度にたくさんの食材を買える時代ではなかったという背景があります。
そのため、当時の人々は限られた食材でも最大限美味しく食べられて満腹になるよう、様々な工夫を凝らしました。 例えば、米は高価で少量しか買えなかったため、大根、芋、豆などの腹持ちの良い具を混ぜて炊き、かさを増やしていました。

また、現在のように保温機能のある炊飯器などなかったため、冷めたご飯を美味しく食べるための冷え雑炊や茶漬けなども考案されました。
このようなスタイルから、江戸時代に食品ロスが出ることは滅多にありませんでした。

現代にも活かせる江戸時代の「エコな習慣」

ここまで江戸時代のエコな暮らしを見てきましたが、「そうは言っても時代が違うし、同じように生活するのは難しいのでは」と思った方もいるのではないでしょうか。
確かに江戸時代と全く同じ暮らしをすることは難しいですが、いくつかの習慣を参考にし、現代の私たちの暮らしに活かすことは十分に可能です。

たとえば、近年改めて注目を集めているのが、江戸時代の人々のマストアイテム「風呂敷」です。
2020年7月から始まったレジ袋有料化以降はエコバッグを持ち歩く人が増えましたが、それと同時に風呂敷人気も高まっています。
風呂敷は荷物の形や大きさにとらわれることなく、1枚で包んで持ち運べるというメリットがあります。
単に「包む」だけではなく、アレンジによってカバン、お弁当包み、ワインボトル包み、そしてもちろんエコバッグなど、多種多様な使い方ができる点も魅力です。
何より洗って何度でも再利用できるというのが、エコな暮らしにぴったりです。

また、ごみを極力出さないという点で役立つものとしては、「家庭用コンポスト」があります。
コンポストには、生ごみの水分を抜いて捨てやすくする「乾燥式」、微生物が生ごみを分解して堆肥化する「バイオ式」、この両方を合わせた「ハイブリッド式」などがありますが、家庭菜園などの堆肥として使用する場合は、バイオ式やハイブリッド式がオススメです。

自家製の堆肥を使って育てた野菜を食べ、そこから出た生ごみはまた堆肥化するという流れは、まさに「小さな循環型社会の実現」だと言えるでしょう。
生ごみを捨てることなく肥料として再利用することで、ごみの廃棄によるCO2排出の削減にも貢献できます。

他にも、買い物する際は予め買うと決めていたものを必要なだけ買う、外出用のTシャツが擦り切れてきたらすぐ捨てずに寝巻にするなど、今までの習慣を少し見直すだけでも、循環型社会の実現はぐっと身近になるはずです。

まとめ

今回は、江戸時代の暮らしから学ぶエコな習慣について紹介していきました。
江戸時代と現代では、生活スタイルも物資の量もエネルギーの種類も何もかもが違いますが、一人一人が意識的にできる習慣というのは案外あまり変わらないのかもしれません。
過去の暮らしに学びつつ、クリーンな未来をつくっていけるような行動をとっていきたいものですね。

参考URL:
・三井住友フィナンシャルグループ「江戸の暮らしに学ぶ、新しい循環型社会の在り方」
・宮井株式会社「風呂敷の歴史」

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