「生きるための水」が「命取りの水」に?途上国で深刻化する水資源問題

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人類で初めて宇宙へ行ったユーリ・ガガーリンの有名な言葉に、「地球は青かった」というものがあります。
この言葉が示す通り、地球には豊かな水、自然、そして生命が存在しており、「まさに奇跡の惑星」と称する声もあります。
しかし、水が豊かに存在するはずのこの星の一部では、今この瞬間にも多くの人々が深刻な水資源問題に脅かされています。
そして今の状況が続けば、30年後には途上国だけでなく、世界中で深刻な水資源問題が発生すると考えられています。

今回は、現在途上国を中心に特に問題視されている水資源問題を知りつつ、それらの問題を解決するための糸口を探っていきましょう。

水および衛生設備の不足

地球上に存在している水は約97%が海水、約2%が北極・南極の氷床と氷河、残る約1%が淡水となっています。
このうち人間が利用するのは主に淡水ですが、淡水は比較的汲みやすい河川や湖沼だけではなく、汲み上げるのが難しい地下深くに流れている場合もあるため、実際に利用できる淡水は0.01%程度とさらに少なくなります。
世界ではそのわずかな淡水を分け合って、70%を農業用水、20%を工業用水にあて、
残りの10%を生活用水として利用しています。


しかし、地球上では雨や雪が降っても同じ量の水が蒸発して出ていくため、地球全体にある水の総量が変わることはありません。
現在世界において人口は増加傾向にありますが、増える人口に対し水の量は一定であるため、このままのペースでいけば、2050年には世界は深刻な水不足に陥ると考えられています。
特に人口増加の激しい途上国などの地域では、既に水資源の確保が厳しい状況下に置かれています。

2021年現在、世界の総人口は78億人と言われています。
そのうちの約70%の人は安全で清潔な水を利用することができていますが、裏を返せば残りの約30%の人は、安全とは決して言いきれない水を利用しているということでもあるのです。
そして30%のうちのさらに2%の人は、未だに整備されていない地表水をそのまま飲んでいます。
2%という数字はごくわずかなものにも感じられますが、地球上の人口が78億人であることを考えると、そのうちの1億5,600万人は地表水を飲んで生きているということになります。

また、トイレなどの衛生設備が十分に管理されていない国もあります。
現在、衛生設備は世界の約40%しか十分に管理されたものを利用することができておらず、約12%の人は未だに屋外排泄を行っています。
このように、世界では多くの人が水および衛生設備の不足問題を抱えています。

ヒ素の混入による健康被害

ヒ素は毒性の高い元素として古くから知られており、その特性を利用して化学兵器、除草剤、殺虫剤などに用いられてきました。
ヒ素は自然界に広く存在しているため、地下水や河川水に微量が混入することは珍しくありません。
しかし、長い時間をかけて混入したヒ素が蓄積し、それによって毒の濃度が高くなった水を日常的に摂取していると、体に様々な悪影響を及ぼす可能性があります。
具体的には、次のような症状が出る場合があります。

・皮膚の異常…角化症や色素沈着など
・顔面の異常…まぶたの皮下浮腫など
・爪や頭髪の異常…爪が割れる、髪が抜けるなど
・末梢神経の異常…食欲不振、指先の麻痺・運動失調など
・がんの発症…皮膚がんや肺がんなど

水源へ混入したヒ素による健康被害については、1950年代頃から既に問題視はされていたものの、その当時は「風土病に過ぎない」と片付けられていました。
しかし1980年代半ば頃になると、中国の黄河流域、カンボジアとベトナムのメコン川流域、ベトナムのレッドリバー流域など、アジアの広い地域でヒ素混入被害が報告されるようになります。
中でも南アジアのベンガル地域にある世界最大の三角州「ガンジスデルタ」におけるヒ素被害は、汚染の分布と規模の大きさでは例を見ないケースだったため、それ以降ヒ素の危険性はより注目されることになりました。

上記の地域では、近年様々な国際NGOの協力によって、ヒ素濃度が比較的高い水源から離れた村に井戸を設置する計画や、水質調査を基にしたヒ素汚染対策などの取り組みが行われています。
たとえば、水中のヒ素濃度が非常に高い地域の一つであるバングラデシュ・フォリドプール県バンガ郡では、水源のヒ素除去、あるいは汚染されてない雨水をろ過するための装置の普及が進んでいます。
それでもアジアのいくつかの地域では、今なお多くの人々の健康がヒ素によって脅かされています。

生きるため、命がけで汚れた水を運ぶ子供たち

栄養失調や感染症、医療現場の不備など、途上国で多くの子供が命を落とす背景には様々な問題が存在しています。
しかしそれぞれの要素を細かく探っていくと、そこにはやはり汚水問題が関係している場合がほとんどであることが分かります。

まず、食糧不足による栄養失調を防ぐためには、作物が豊富に育つための清潔な水が必要です。
また感染症の中は、汚水が肌に触れたり、体内に入り込むことによって発生するものもあります。
そして医療現場においても、治療を行うためにはやはり清潔な水が必要になります。
これらのすべてが十分に足りていない地域で健康な生活を営むことは、非常に厳しいと言えるでしょう。
それでも、前述したように水資源の確保が難しい途上国においては、たとえ汚れていても毒が含まれていても、「今日一日を生きるために」その水を利用する人々が沢山います。

アフリカのとある国では、子供たちが毎日往復8時間かけて泉へ行き、そこで汲んだ水を家まで持ち帰るそうです。
しかし、水汲みに使うタンクは険しい道を進む中でいつも泥にまみれ、やっとの思いで汲んだ水もタンクの底が見えないほどに濁っています。
そして、このような汚水には様々なウイルスや細菌が混入しているため、体内に入り込むと赤痢やコレラなどの下痢症状が発生し、最悪の場合死に至ることもあります。
また汚水中に含まれる寄生虫は、直接命を奪うだけでなく、子どもの成長を阻害したり、大人の体力を奪い労働力を低下させるなど、貧困の大きな原因となっています。

この問題に関しても、近年では国際NGOの協力によって水源の保全および整備や、汚物による水質汚染を食い止めるための公衆トイレの設置などが進められています。

水資源問題解決のために私たちができること

2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な17の目標)の6番目には、「安全な水とトイレを世界中に」という目標が掲げられています。
そしてこの目標を達成するためのターゲット(実現のための方法)には、次のようなものが挙げられています。

・2030年までに誰もが安全な水を安く利用できるようにする
・2030年までに誰もがトイレを利用できるようにする
・2030年までに水質汚染を減らす
・2030年までに、淡水を持続可能な形で利用できるようにする

・水やトイレをより良く管理できるように、コミュニティの参加を推進する

これらのターゲットの達成には様々な国や企業が取り組んでいますが、個人レベルで取り組むとなると、「何から始めればいいんだろう…」と悩んでしまうのではないでしょうか。
その場合、まずは途上国の水資源問題の解決を支援している国際NGOなどの団体を調べ、「ここなら信頼できる」と感じた団体があれば、無理のない範囲で募金してみてはいかがでしょうか。
他には、日々の生活の中で水を使い過ぎていないか一度見直してみるのも良いでしょう。
自分の生活を見直すだけでは、水資源問題の解決に全く貢献していないように感じるかもしれません。
しかし一人一人が心掛けるようにすれば、世界全体の課題としての水資源問題を、少しでも軽くすることができるのではないでしょうか。

まとめ

水が「十分にあるか」「不足しているか」「綺麗か」「汚れているか」によって、その地域が抱える問題は大きく異なります。
私たちが暮らす日本でも日々様々な社会問題が取り沙汰されていますが、少なくとも日本の上下水道はしっかりとした整備が行われており、私たちは当たり前のように毎日清潔な水を使うことができています。
「日本だけでなく、より多くの国々で質の良い水を使えるようになるにはどうすればいいのか」については、今後も多くの人々が考えていくべき課題だと言えるでしょう。

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