目指すは「再エネ100%」!ハワイの取り組みから学べること

エネルギー(再エネ・化石燃料etc.)

暖かな気候や雄大な自然に恵まれ、新型コロナウイルスの感染拡大以前は日本からも多くの観光客が訪れていたハワイ。
そんなハワイでは、2015年に全米で初めて「2045年までに再生可能エネルギーの普及率を100%にする」という法律が制定されて以降、再エネ普及に向けた様々な取り組みが行われています。
定番の観光地として親しまれているハワイの取り組みは、日本に暮らす私たちにもなにかヒントを与えてくれるかもしれません。
今回は、ハワイが再エネ100%を目指すまでの道のりや、現在ハワイで進められている再エネ普及政策などについて紹介していきます。

ハワイが再エネ100%を目指すまでの道のり

元々「石油依存社会」だったハワイ

ハワイは太陽光、風力、地熱と言った豊かな自然資源に恵まれているにもかかわらず、実は再エネ100%を目指す前は長年石油に依存し続けていました。
それも、ハワイではエネルギーや食糧のほとんどを島外からの輸入に頼っていたため、ハワイの電気料金は常に高く、また石油価格の変動によって経済状況を左右される状況から抜け出せずにいました。

とはいえ一時はオイルショックのあおりなどを受けながらも、それ以降石油価格は比較的安定していたため、代替エネルギーについて表立って議論が交わされる機会は中々ありませんでした。
しかし、2007年に景気が減速した影響で石油価格が高騰すると、ハワイでは再エネ導入を求める声や化石燃料への懸念が一気に高まり、これにより本格的に「再エネ普及100%を実現させるためにはどうすべきか」について議論されるようになりました。

再エネ普及のきっかけの1つは「3.11」

「石油の代替エネルギーとして原子力が挙げられることはなかったのか」と思った方もいるかもしれませんが、実はハワイでは1978年以降「地域的に地震や津波などの自然災害が多い」という理由から、州の憲法によって原子力発電が禁じられています。
それでも一部からは「原発の導入を検討すべき」という声は挙がっていたようですが、その声もある出来事を境に無くなったと言われています。

その出来事とは、2011年3月11日に発生した東日本大震災および福島第一原発事故です。
ハワイとよく似た地理条件を持つ日本で起こったこの歴史的な自然災害こそが、ハワイが石油にも原子力にも頼らない再エネ社会を目指す大きなきっかけとなったのです。

ついに制定!「再エネ100%法案」

石油価格高騰や東日本大震災を受け、ハワイでは再エネ普及に向けた様々な議論が交わされた結果、2015年5月5日に全米の州で初めて「2045年までにハワイにおける再生可能エネルギー発電の割合を段階的に100%に到達させる法案(HB623)」が可決されました。
同年6月上旬にはデービッド・イゲ州知事の署名を受け、正式な法律として制定されています。
この法律によってハワイの発電事業者は、2020年までに30%、2040年までに70%、2045年までに電力の100%を再エネから供給することが義務付けられるようになりました。

また、再エネ100%法案の可決前となる2008年には「ハワイ・クリーンエネルギー・イニシアチブ」も開始しており、このプロジェクトでは2030年までに再エネ普及率を40%まで高める目標が設定されています。

ハワイで進められている環境政策

前述したようにハワイは豊かな自然資源に恵まれているため、再エネに関しては石油のように輸入に頼らず、自給自足でまかなうことに力を入れていています。
中でも太陽光発電の普及には積極的に取り組んでおり、現在ハワイでは多数の大型太陽光発電システム(メガソーラー)が稼働しています。
2017年には、オアフ島のワイアナエ地区にハワイ最大規模のメガソーラーを設置しています。
太陽光発電の他にも、風力発電、地熱発電、バイオマス発電の普及なども実施しており、洋上風力発電や潮汐力を利用した発電の研究も進められています。

また、ハワイでは再エネ発電システムを建設する際、設置予定となっている地域で事前説明会や意見交換会などが数回に渡り開催されるそうです。
これは地域住民に再エネへの理解を深めてもらい、快くシステム設置への合意を得るためだと言われています。
さらに再エネ普及率を上げるための政策として、「住宅の屋根やビルなどに太陽光発電システムを設置した電力消費者は税控除を受けられる」という制度も実施されています。
この制度により、2018年にはハワイ全世帯のうち3分の1が太陽光発電システムを自宅に導入するまでになりました。

そして同じく2018年には、集合住宅に暮らす人および企業向けに「コミュニティソーラープロジェクト」という計画も発足しています。
このプロジェクトに参加すると、地域で作られる太陽光発電システムに出資することになり、その代わりとして、発電量の割り当て分だけ電力消費量が割り引かれる仕組みとなっています。

このように様々な努力によって、ハワイの再生エネ普及率は2017年には全エネルギー中27%に到達し、そして2020年には目標の30%を実現させました。
ちなみに「2045年までに二酸化炭素の排出量をゼロにする(カーボンニュートラル化)」という法律も2018年に制定されているため、以降ハワイではますます再エネ普及に向けた動きが活発になっています。

ハワイで再エネ普及を進める上でクリアすべき課題

余剰電力の貯蔵

順風満帆に見えるハワイの再エネ普及拡大ですが、100%を達成するためにはまだまだ乗り越えるべき課題が残されています。
その一つが、余剰電力の貯蔵です。
太陽光発電システムを大量かつ急速に導入したことによって、ある地域では太陽光発電の発電量が日中の最小電力需要を上回り、その結果送電系統に異常が生じてしまいました。
これは人口約140万人のハワイでは発電した電力をすべて消費することが難しく、電力の需要と供給にミスマッチが発生したのが原因だと考えられます。

この件以降、ハワイではメガソーラーに蓄電池を併設することで、発電電力の需要と供給問題を軽減する対策がとられるようになっています。
そして「メガソーラー+蓄電池スタイル」は年々普及拡大し、2019年1月にはカウアイ島で世界最大規模のメガソーラー・蓄電池システムを稼働させる「ラワイ・プロジェクト」が開始しています。

再エネの多様化

前述したように、現在ハワイで普及している再エネのほとんどは太陽光発電によるものとなっていますが、天候や時間帯によっては太陽光による発電は難しいため、そこを補う再生可能エネルギーの普及、つまり再エネの多様化が重要視されています。

それに対し、一部からは「既に技術が確立している陸上風力発電を増やすべきだ」という声が挙がる一方で、陸上風力発電にはハワイ固有の野生生物への影響や観光業との折り合いなど様々なリスクも懸念されるため、今一つ普及が伸び悩んでいる状態が続いています。
この点に関しては、陸上よりも環境リスクが低いとされる洋上風力発電の技術が確立されるのを待つのが良いのかもしれません。

また、地熱発電にも課題が残っています。
太陽光発電に次ぐ大きな可能性を秘めていると言われる地熱発電ですが、2018年のキラウェア火山噴火の影響で稼働中の地熱発電システムが長期的に停止したことをきっかけに、その自然災害耐性に不安の目が向けられるようになっています。
他にも、地熱発電は有害ガスである硫化水素を流出させるおそれがあること、ハワイに古くから伝わる火と火山の女神である「ペレ」への冒涜として宗教的な理由から地熱発電に反対する地域住民がいるなどの理由から、今後ハワイにおける地熱発電の普及は限定的にのみ進められる予定となっています。

まとめ

今回は、再エネ100%を目指すハワイで行われている取り組みについて紹介していきました。
島であること、自然災害が多いこと、エネルギーの大半を輸入に頼っていることなど、日本とハワイにはいくつも共通点があります。
だからこそ、再エネ普及拡大にまい進するハワイの取り組みには、日本にいる私たち一人一人が学べる要素が沢山あるのかもしれませんね。

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