アンモニアで火力発電?次世代エネルギーとして期待されるその底力とは

エネルギー(再エネ・化石燃料etc.)

「刺激臭を放つ有害物質」というイメージの強いアンモニアですが、一方で古くから畑の肥料として活用されるなど、実用的なエネルギーとしての側面も持ち合わせています。
さらに近年では、アンモニアを燃料に用いた火力発電の実現に向けた実験研究も進められています。
今回は、そんなアンモニアに秘められた意外なポテンシャルや、実用化に向けた様々な取り組みについてチェックしていきましょう。

様々な場面で活用されるアンモニア

冒頭でも述べたように、アンモニアは元々畑で肥料として使われることの多い存在でしたが、化学技術が発達するにつれ、近年では農業以外の様々な場面でも活用されるようになっています。

その一つが、火力発電所から出る(スス)に含まれる窒素酸化物(NOx)という大気汚染物質の排出を防ぐ還元剤です。
NOxにアンモニアを組み合わせることで化学反応を発生させ、窒素酸化物を水と窒素に還元することで大気汚染を防いでいます。

またアンモニアは、衣類などに用いるナイロンなどの合成繊維の原料としても活用されています。
この他にも様々な分野で使われるようになるにつれ、近年ではアンモニアを安全に輸送するためのパイプラインや、安全性に対するガイドラインが確立されるまでになっています。

世界のアンモニア事情

アンモニアの世界総生産量は2019年時点で約2億トンとなっており、生産上位国にはアメリカ、中国、ロシア、インドが並んでいます。
なんとこの4ヵ国だけで、世界総生産の半数以上を占めていることが分かっています。

一方で世界全体のアンモニア輸出入量を見ると、2018年の時点では約2000万トンと、生産量のわずか1%程度となっています。
つまり、生産国で生産されたアンモニアの90%は、輸出ではなく自国消費に回されているということです。
生産上位国には共通点して「人口の多い農業大国」という側面があるため、生産したアンモニアのほとんどは農業用肥料として消費されていると推測されています。

また、アンモニアの輸出量が最も多い国はトリニダード・トバゴ、その次にロシア、サウジアラビアと続いており、この3カ国だけで世界の輸出量の約半数を占めています。
対して輸入量が最も多い国はアメリカ、その次にインド、モロッコと続いており、1位のアメリカはトリニダード・トバゴにとって最大の輸出国となっています。

アンモニアに期待される「エネルギー分野での活躍」

様々な分野、そして様々な国でポテンシャルを発揮しているアンモニアは、エネルギー分野においても関心が高まっています。

アンモニアがエネルギー分野で期待されていることの一つに、「水素の輸送サポートとしての役目」があります。
次世代エネルギーとして注目されている水素ですが、気体状態の水素は非常に軽く、その性質上大量輸送が難しい点が長年普及の足かせとなっていました。

この解決策として白羽の矢が立ったのが、水素分子を含んでおり、なおかつ輸送技術が確立されているアンモニアです。
水素を一時的にアンモニアに変換し輸送先でまた水素に戻すことができれば、大量輸送も実現できると考えられています。

また、実はアンモニアは燃焼してもCO2を発生させない「ゼロカーボン物質」でもあることから、近年ではアンモニアを燃料として活用するための研究も進められています。
そのためアンモニアだけを燃料とした発電を視野に入れた技術開発が進められる一方で、石炭火力発電のボイラーにアンモニアを入れて燃やすことで火力発電を行う「混焼(こんしょう)」の技術開発も進められています。

こうしたアンモニアの燃料としての実用化に向けた取り組みには政府はもちろん、世界最大級の火力発電会社であるJERAも参入しています。
JERAが2020年10月に発表した「JERAゼロエミッション2050」の中には、火力発電の燃料を一部、あるいは全てアンモニアに置き換えることが目標の一つとして記されています。

着実に進む「混焼」の実証実験

ここでは、混焼についてより詳しく見ていきましょう。

前述したように、アンモニアを燃料として実用化させる中で最も積極的に研究が行われているのが混焼です。
現在日本は発電の大半を火力に依存していますが、その反面、火力発電から排出されるCO2量は国内総排出量の約4割を占めているという事実があります。
政府は2020年に「2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする」という目標を発表していますが、今のまま火力発電に頼り切っていては、脱炭素社会の実現は非常に厳しいと言えます。

そこで、火力発電によるCO2排出問題の解決策として挙げられた発電方法の一つが混焼というわけです。
石炭火力発電へのアンモニア混焼は既存の設備をほとんど変えることなく実現することができるため、少ない費用でCO2削減効果を出すことができます。

2021年6月からは、JERAが愛知県に保有する100万kW容量の碧南火力発電所で20%混焼の実証試験が開始しています。
今後、国内で行われる発電の半数近くがアンモニア燃料の専焼に切り替わった暁には、およそ2億トンものCO2が削減できると予想されています。

アンモニアを燃料として実用化するために越えるべき課題

各方面から期待されているアンモニアの燃料化ですが、実現するためにはまだまだクリアすべき課題があります。
その一つが「どのようにして持続可能なアンモニアのサプライチェーンを構築していくか」です。

もし日本国内すべての石炭火力発電所で20%混焼を行うことになれば、前述した世界全体の輸出入量とほぼ同量のアンモニアが必要になります。
そのため、今後石炭火力発電所によるアンモニアとの混焼率が増加したり、アンモニアのみを燃料とした「専焼」による火力発電が行われるようになると、現在の世界の生産量では不足し、その結果市場価格の大幅な高騰なども引き起こす可能性があります。
サプライチェーン問題をクリアし、アンモニア燃料を持続可能な存在にするには、まだまだ対策を練る必要性があると言えます。

このような課題を受け、アンモニア燃料の安定的な供給体制を確立するべく2020年10月に設立されたのが、「燃料アンモニア導入官民協議会」です。
政府機関と民間企業によって構成されており、電力会社、供給を担う商社、技術面をサポートする設備メーカーなどが参加しています。

協議会ではアンモニア燃料の供給体制における課題を共有した上で、実用化した際の導入に向けた取り組みについての話し合いが進められています。
また、協議会に先立って「一般社団法人クリーン燃料アンモニア協会(CFAA)」も設立されており、2021年7月時点で100社近くの国内企業と16社の外国企業が参加しています。

現在は、アンモニア輸出上位国から日本へアンモニア燃料を輸送する実験が進められています。
また将来的にはアメリカやオーストラリアなどの国で新たにアンモニアを生産し、輸入することも視野に入れられています。

日本がいち早く安定的な供給体制の確立を実現し、アジアを中心にアンモニアの混焼あるいは全焼技術を普及していくことができれば、世界のアンモニア燃料マーケットをリードすることも不可能ではないでしょう。

まとめ

今回はアンモニアの燃料としての可能性について紹介しましたが、他にも化石燃料に代わる自然エネルギーとして研究が進められている物質は沢山あります。
それらの物質については、また改めて紹介できたらと思います。

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