東芝、「無充電EV」実現に貢献!太陽光発電&蓄電池事業からの撤退後に進む道とは

太陽光発電

シャープやパナソニックなどと並び、国内大手電機メーカーの一つとして名高い東芝。
その技術は太陽光発電および蓄電池などの分野にも活かされ、高性能かつ高効率な製品は販売以来高い支持を得ていましたが、2019年3月には住宅用蓄電池の、2021年3月には住宅用太陽光発電システムの製造・販売から惜しまれつつも撤退してしまいました。

ところが先日、東芝は一度も充電せずに走行できる「無充電EV(電気自動車)」などの実現性を高める、新たな太陽電池の開発に成功したことを発表しました。
住宅用太陽光発電および蓄電池事業から撤退した一方で、このような研究を進めていたとは驚きですね。
しかし、決して突然取り組んだわけではなく、ここに至るまでには企業存続に向けたさまざまな努力があったのです。

今回は、東芝が元々扱っていた住宅用太陽光発電システムや蓄電池の凄さと、今東芝が取り組んでいる無充電EVについて解説していきます。

東芝の住宅用太陽光発電システムはココが凄かった!

東芝が2021年3月まで販売していた量産型住宅用ソーラーパネルの中でも、特に高性能だったのが「Sシリーズ」です。
Sシリーズは世界トップクラスの発電効率を誇り、20~22%もの発電効率を実現していました。

これだけの高効率を実現した理由の一つには、ソーラーパネルに「バックコンタクト方式」を採用したことが挙げられます。
バックコンタクト方式とは、太陽光発電を行うための電極をソーラーパネルの裏側に集める製造手法のことです。
この方式を採用することで発電効率を最大限まで上げられるとともに、パネル自体もシンプルで高級感のある見た目に仕上げることができます。

なお、東芝の取り扱う住宅用ソーラーパネルは、「サンパワー」というアメリカのエネルギー企業が製造していました。
サンパワーはNASAに技術提供を行うほどの高い技術力を持っており、だからこそ国内大手メーカーの東芝も生産を任せていたのでしょう。

東芝の住宅用蓄電池はココが凄かった!

エネグーン(出所:東芝)

東芝が2019年3月まで製造・販売していた住宅用蓄電池「エネグーン」は、他の追随を許さない「圧倒的な長寿命」が特徴でした。

他メーカーの製品の場合、80%以上の容量を維持できるのは大体6,000回の充放電までとされていますが、エネグーンは15,000回以上の充放電を繰り返しても80%以上の容量を維持することができたのです。
さらには、蓄電池容量を最大限活用することのできる「SOCレンジ100%」も実現していました。

SOCレンジとは、完全充電状態を100%、完全放電状態を0%とした時に、実際に電池を使うことのできる充電状態の幅の広さのことです。
一般的に、蓄電池は過充電や過放電をすると寿命が短くなってしまうという特性があるため、SOCレンジは高くても90%程度が上限となっていることが多いのですが、東芝エネグーンはSOCレンジ100%を実現し、かつ長い寿命も兼ね備えていました。

この2つが両立できたカギは、負極にチタン酸リチウムを採用した東芝二次電池「SCiB™」の存在です。
一般的なカーボン系蓄電池に比べ、チタン酸リチウム系の蓄電池はSOCレンジを広くとっても電池の性能が低下しにくいことが分かっています。
さらにSCiB™の場合、わずか6分間で80%以上の充電が可能となっており、急速充電を繰り返しても劣化がしにくい点も特徴です。

また、SCiB™は高い低温性能も備えていました。
一般的な蓄電池の場合、低温環境に置かれると性能が低下してしまいますが、エネグーンは-30℃の環境でも繰り返し充電、放電を行える設計になっていました。

なぜ東芝は住宅用太陽光発電&蓄電池事業から撤退したの?

ここまで紹介したように、東芝が扱っていた住宅用太陽光発電システムと蓄電池はどちらも業界トップクラスの品質を誇っていました。
それだけに事業撤退が発表された当時は、業界内から多くの戸惑いの声が挙がりました。
施工店や販売店からは、「良い製品だと取引先やお客様に勧めていたのに、いきなりやめることになったので苦情が相次いだ」と嘆く声も挙がっていたそうです。

東芝は住宅用蓄電池事業から撤退した理由として、「長寿命や性能面などで差別化を図ったものの、住宅用に関してはそれを価格に反映させることが難しく、事業損益として厳しい状況が続いていた」と説明しています。
要するに高性能ゆえに価格を下げることができず、幅広い購買につなげることができなかったというわけです。
住宅用太陽光発電事業の撤退に関しては詳しく触れられていませんが、おそらく蓄電池事業の撤退と近い理由でしょう。

また、2015~2017年頃に東芝が経営危機に陥っていたことも、住宅用太陽光発電と蓄電池事業からの撤退に関係していると考えられています。
企業を立て直す中で生まれた新しい事業戦略のうちの一つが、この撤退だったのかもしれません。

東芝が今取り組む「透過型Cu2O太陽電池の開発」とは

住宅用太陽光発電および蓄電池事業からは撤退したものの、それ以降も東芝はリチウムイオン蓄電池や太陽電池の開発を成長事業として位置づけ、研究を進めていました。

そして冒頭でも触れたように、東芝は2021年12月22日、無充電EVなどの実現性を高める新たな「透過型亜酸化銅(Cu2O)太陽電池」を開発したことを発表しました。
この太陽電池を搭載したEVの航続距離は、1日あたり約35kmだと試算されています。
将来的には、走行中に太陽光発電で発電した電気を蓄電池に補充することで、さらに長距離の走行が可能になると予想されています。

かねてより東芝は、低コストかつ高効率な「タンデム型太陽電池」の実現に向け、透過型亜Cu2O太陽電池の研究開発を進めていました。
タンデム型太陽電池とは、「トップセル」「ボトムセル」と呼ばれる2つの異なる太陽電池を重ね合わせて発電することにより、限られた面積の中で発電効率を高める手法のことです。

2019年、東芝は世界で初めてトップセルとして透過型Cu2O太陽電池を開発しました。
これに既存のシリコン(Si太陽)電池をボトムセルとして組み合わせる実験を行った結果、Si太陽電池のみの効率をはるかに上回る23.8%という高効率を実証することに成功しています。
現在に至るまで、この実証実験に成功しているのは東芝のみとなっています。

東芝が開発したCu2O/Siタンデム型太陽電池の仕組み(出所:東芝)

今まで高効率な太陽電池の代表格といえば、ガリウムヒ素半導体(GaAs)などの「III-V族太陽電池」を積層したタンデム型太陽電池でした。
しかし、30%台という圧倒的な発電効率の高さゆえに、Si太陽電池と比較するとかなり高額な点がネックとなっていました。
一方で、透過型Cu2O太陽電池は地球に豊富に存在する酸素と銅によって構築されており、基板、原材料、製造装置などの全てにおいてGaAs太陽電池よりも低コストなため、幅広い活用法が期待されています。

今回の発表では、透過型Cu2O太陽電池をトップセル、高効率Si太陽電池をボトムセルとして組み合わせることで、全体の発電効率を27.4%にまで高められることが試算されています。
これはCu2O/Siタンデム型太陽電池が、Si太陽電池の世界最高効率である26.7%を上回るポテンシャルを有していることを示しています。

東芝は今後、高効率化は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として進めることを発表し、2025年の実用化に向けてCu2O/Siタンデム型太陽電池の発電効率を30%台にすることを目標に掲げています。
また、実用化した暁にはEVに限らず、電車や船などのモビリティ全般、さらにはドローンや人工衛星などへの活用も視野に入れているとのことです。

参考URL:東芝「低コスト高効率タンデム型太陽電池向け世界最高効率8.4%を達成した透過型Cu2O太陽電池を開発」

まとめ

経営危機や事業撤退などの難しい局面を乗り越え、今また新しい事業に挑戦する東芝の姿勢には、長年日本の電機業界をけん引してきた大手メーカーとしての誇りを感じますね。

ちなみに住宅用太陽光発電事業から撤退したとはいえ、東芝の太陽光発電システムを設置された方に対するサポートはもちろん継続されています。
また、当社も長年東芝の太陽光発電システムを扱っていましたので、何か分からないことがある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。

東芝公式サイト
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