気候変動対策会議「COP」を徹底解説!今年開催の「COP26」が重要視されるワケ

環境問題

2021年10月31日、イギリス・スコットランドのグラスゴーにて、「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(United Nations Climate Change Conference of the Parties)」、通称「COP26」が開幕しました。
このサミットは11月12日までの2週間開催され、世界各国が気候変動についての新たな対策計画を公表することになっています。

中でも需要視されているテーマは、「炭素市場(カーボンマーケット)の規制」や「CO2排出量実質ゼロ(ネットゼロ)」に関する財政責任などです。
26回目となる今回は「人類のターニングポイント(turning point for humanity)」とも言われており、ネットゼロへの舵を切る強固な気候変動対策の確立が期待されています。

COP26には、日本の岸田総理を含む約200の国々のリーダーをはじめ、動物学者兼プロデューサーのデイビッド・アッテンボロー、ローマ教皇フランシスコなどといった著名人が参加し、地球温暖化によってもたらされる地球規模の課題に対して今後どのように取り組むべきかについて協議します。

今回は、COPとは一体どんなサミットなのか、何故今年のサミットは注目されているかなどについて解説していきます。

COPとは

COPは締約国会議(Conference of the Parties)の略称で、今年は第26回目の開催となるので「COP26」と呼ばれています。
1995年に始まって以来、コロナ禍にあった2020年を除いて毎年開催されており、その度に「気候変動枠組条約」加盟国のリーダーや著名人が集まり、気候変動を食い止めるための世界的戦略について議論しています。

COPの最大の目的は、CO2排出量を削減することです。
この目的に向け、COPでは開催ごとに世界が一丸となって、生態系がこれ以上崩壊する前に気候変動に打ち勝つための目標を立てています。

これまでにCOPによって決定された主な枠組み

COPではこれまで、気候変動対策に関するさまざまな枠組みが決定されました。
その中でも得な重要なものが、「京都議定書」「パリ協定」です。
ここでは、それぞれの内容について解説していきます。

京都議定書

京都議定書は、1997年に京都にて開催された第3回会議で採択された、温室効果ガスの削減目標を定める枠組みです。
「2008年~2012年までの4年間のうちに、先進国全体の温室効果ガス排出量を1990年比で最低でも5%削減すること」が目標として掲げられました。
その後、2013年~2020年までの7年間が「第二約束期間」として設定され、国ごとに排出削減量目標が設定されました。
つまり、2020年までの温暖化対策の目標を定めたものが京都議定書です。

ただし、京都議定書についてはいくつかの問題点が指摘されています。
最も大きな問題点は、各批准国の目標値が明確でなかったことです。
たとえば、2018年時点でCO2排出量第1位の中国、第3位のインドは先進国に含まれていないため、排出量の多さにかかわらず具体的な削減目標が提示されていません。

また、同じく2018年時点でCO2排出量が第2位となっているアメリカは途中で離脱し、第4位のロシア、第5位の日本はそもそも第二約束期間に参加しなかったため、具体的な削減量目標が定められませんでした。

パリ協定

パリ協定は、2015年にパリにて開催された第21回会議で採択された枠組みです。
温室効果ガス排出量削減目標の策定を義務づけるとともに、進捗調査などにおける法的拘束力を強めるために設定されました。
また京都議定書が2020年までの温暖化対策の目標を定めていたのに対し、パリ協定では2020年以降の対策について定めています。

パリ協定では、「世界全体の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃以下に保ち、なおかつ1.5℃以下に抑える努力をすること」を目標に掲げています。
また、京都議定書と大きく異なる点は目標達成の対象国です。
パリ協定では先進国に限らず、途上国も含むすべての加盟国に温室効果ガスの排出削減を求めています。
これにより、京都議定書では具体的な削減目標が提示されなかった中国やインドにも、温室効果ガス排出量削減目標の策定が義務付けられることになりました。

ちなみに、アメリカは当初パリ協定に加盟していたものの、トランプ前政権の意向によって2019年に一度協定離脱を発表しました。
しかし2021年にバイデン新政権に交代したことをきっかけに、再び加盟国となっています。

COPが他の環境サミットと違う点とは

COPの特徴は、他の環境や気候に関するサミットに比べて、よりグローバルかつ公平性が高いことです。
COPの参加者は誰もが発言権を持ち、国を越えた忌憚のない議論を交わすことができます。
議決する際は「1国1票」方式で進められる点も、COPの公平性の一端を担っています。

また各国のリーダーや政策立案者だけでなく、動物学者、気候科学者、環境活動家など、さまざまな形で
環境問題に関わっている人々が参加する点も特徴です。
さらには、企業、地方自体、教育機関、青年団体などを通じて、民間の人々の意見も積極的に取り入れています。

COP26と新型コロナウイルス

COP26は本来であれば2020年に開催される予定でしたが、世界規模の新型コロナウイルス感染拡大により2021年に延期されました。
しかし、2021年に入りワクチンが開発されてからも、順調に接種率を上げる先進国とワクチンの確保自体が難しい途上国との間で「ワクチン格差」が生まれ、途上国からのCOP26への参加も危ぶまれていました。
途上国が参加できなければCOP26の公平性も失われるため、公平環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんのように、一度「COP26への参加辞退を検討している」と表明した人もいます。

このような状況を受け、イギリス政府はCOP26の参加者全員に対してワクチンを提供することを発表しました。
イギリスと国連は、ワクチンを確保できない参加者になるべく早く届けるため、COP26への参加登録を例年よりも早く開始しました。

この他にも開催に向けてさまざまな取り組みが行われた結果、無事COP26は開催に至りました。
ちなみに、一時は参加しない意向を示していたグレタさんも開催前日の10月30日に現地入りし、11月2日には開幕早々、COPに合わせて行われた気候変動デモに参加しました。

今回のCOP26が重要視される理由

今回開催されるCOP26は、パリ協定が採択された2015年のCOP以降、最も重要な会議になると言われています。
何故なら、今回参加する各国はパリ協定の掲げる目標達成に向けて「国が決定する貢献」を示し、「今まで以上に具体的な排出量削減への取り組み」を表明する必要があるからです。
いわばCOP26は、パリ協定の採択後初となる「気候変動対策の中間テスト」と言えます。

ちなみに国連機関のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が今年8月に発表した最新の報告書によると、現在世界の温室効果ガス濃度は約200万年ぶりの高水準に達しており、世界の平均気温は産業革命前と比べ、すでに1.09℃上昇していることが分かっています。
また、パリ協定の掲げる「気温上昇を1.5℃に抑える」という目標まではあと0.41℃としながらも、3年前の報告書よりも1.5℃上昇の時期が10年前倒しになったことも明らかにしました。

このままのペースで地球全体の気温が上昇すると、猛暑や大雨などの異常気象が今よりも増え、さらには山火事や洪水などの災害も頻発するようになる可能性があります。 このように今回のCOP26が注目される背景には、かつてないほど深刻化している気候変動の存在があるのです。

まとめ

今回は、現在開催中のCOP26の重要性について解説していきました。
進行する気候変動を食い止めるためにも、COP26参加者の方々には是非有意義な議論を交わし、具体的な目標を提示して欲しいものです。
もちろん私たちも「参加者ではないから」といって他人事だと思わず、日ごろから気候変動対策について考える意識を持つことが大切です。

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