「また値上げ!?」明細を見て思わずため息…電気代・ガス代が値上げする理由とは

エネルギー(再エネ・化石燃料etc.)

先日、東京電力や関西電力をはじめとする大手電力会社9社が、3月に電気代を55~292円ほど値上げすることを発表しました。
また、東京ガスをはじめとする大手都市ガス4社も、3月にガス代を168~229円ほど値上げすることを発表しました。

これは3月に限った話ではなく、このところ電気代とガス代はもの凄い勢いで値上げし続けています。
たとえば利用者が多い東京電力の場合、平均的な家庭における2021年3月の電気代は6,000円程度だったのに対し、2022年3月は8,000円程度になると想定されています。
つまり、1年間でなんと2,000円近く値上げしているということになります。

さらに、電気代は制度上「基準価格より5割高くなった場合、それ以上は値上げできない」と定められていますが、関西電力や中部電力などではその上限を突破してしまい、会社が超過額を負担する事態となっています。

生活に直接関わる電気代やガス代が値上げする現状には思わずため息が出てしまいますが、一体何故こんなに値上げが続くのでしょうか。
そこで今回は、電気代とガス代が値上げする理由や、今後の動向などについて解説していきます。

電気代・ガス代が値上げする理由

結論から言うと、電気代とガス代が値上げする原因は、いずれも「エネルギー価格の高騰」にあります。
ここで言うエネルギーとは石炭やLNG(液化天然ガス)のことで、どちらの価格も高騰しているのが現状です。
エネルギー価格が高騰している理由について解説する前に、まずは日本におけるエネルギー価格と電気代を結び付ける仕組みについて解説しましょう。

かねてより、日本は火力発電で国内電力の大半を賄っています。
この火力発電に使われるエネルギーの価格は常に変動しており、もし価格が急激に上がった場合、それがそのまま電気代に直結してしまうと、電力会社も消費者も大きなダメージを受けてしまいます。
そんなダメージを軽減すべく1996年より導入されているのが、「燃料費調整制度」です。

この制度は、過去3か月間に火力発電に使用されたエネルギー価格の平均を算出し、2か月後の電気代に反映させる仕組みとなっています。
つまり月々の電気代の決定には、「燃料費調整制度」が深く関係しているということになります。

しかし、いくら燃料費調整制度で価格変動をならしたからといって、エネルギー価格高騰の影響をまったく受けないわけではありません。
日本では総発電量のうち、火力発電が占める割合が2020年度で約76%となっており、そのうちLNGが約40%、石炭が約30%、石油が約6%となっています。
さらにこのうちのほとんどは輸入燃料に頼っているため、石炭や液化天然ガスの価格が高騰すると、その影響によって電気代も値上がりしてしまうというわけです。

エネルギーの中でも、現在最も危機的な価格高騰を見せているのが液化天然ガスです。
次は、液化天然ガスの価格が高騰する背景について解説していきます。

LNG(液化天然ガス)の価格が高騰する理由

長期契約の場合

前述したように、日本の火力発電に使用されているエネルギーの中で最も大部分を占めているのはLNG(液化天然ガス)です。
液化天然ガスとは、その名の通り天然ガスを液化させたものです。

日本の電力会社が輸入するLNGの大半は、10年間程度の長期契約を結んでいます。
「長期で契約しているのなら価格も安定するのでは?」と思われるかもしれませんが、実はそうでもありません。

というのも、LNGの長期契約は、3ヶ月分の原油価格によって変動する仕組みとなっているからです。
原油価格が上がれば、その分LNGの価格も上がり、それが電気代の値上がりを引き起こすというメカニズムとなっています。

2020年春、新型コロナウイルスの影響により世界中の経済活動がストップしたため、需要が激減した原油は一時的に価格が下落しました。
その後徐々に経済活動は再開しましたが、再び高まった原油需要に供給が追い付かず、今度は価格上昇が続く事態となっています。

さらに、最近ではアラブ首長国連邦(UAE)の石油関連施設で爆発や火災などが相次いだことや、ウクライナを巡るロシアと欧米との対立が続いていることから、ますます供給を懸念する声が強まっています。
ロシアと欧米の関係悪化については、次の章で詳しく解説します。

1回ごとの契約(スポット価格)の場合

LNGの取引を長期契約ではなく1回ごとに行う場合は、「スポット価格」という取引価格が適用されます。
長期契約の場合、LNGの価格は原油価格の影響を受ける一方で、スポット価格は天然ガス自体の需給によって大きく変動します。

日本の電力会社が輸入する際に適用されるアジア市場のスポット価格は、2021年の10月初旬には前年の同時期と比べて10倍以上の価格まで高騰しており、今現在も高い水準で推移しています。

この価格高騰の大きな原因として考えられているのが、「中国の青空作戦」と「ロシアと欧米の関係悪化」です。
まず「中国の青空作戦」とは、中国による大掛かりな大気汚染対策の総称です。
2017年に習近平国家主席が「青空を守る」と宣言して以降、中国はPM2.5削減などに向けた取り組みを急速に進め、その結果中国の大気は劇的に改善しています。

その対策の一つとして、中国は石炭由来の火力からCO2排出量が比較的少ない天然ガス由来の火力へとエネルギーシステムの転換を加速しており、それに伴い液化天然ガスの輸入量も大幅に増やしています。
しかし一方で、急速なエネルギーの切り替えによって燃料コストが嵩み、中国経済や国民の生活に悪影響を及ぼしかねない事態となっています。

LNGを積んだ船

次に前章でも挙げた「ロシアと欧米の関係悪化」ですが、これはロシアとウクライナをめぐる国際問題で、現在最もスポット価格の高騰に影響を及ぼしている原因だと考えられています。
2022年2月現在、ロシアがウクライナに軍事侵攻する可能性が高まっており、ヨーロッパを中心とした欧米の情勢が緊迫化しています。

国際的な緊張の中、エネルギー大国であるロシアとの対立激化は、ヨーロッパの天然ガスのスポット価格高騰に現在進行形で大きな影響を及ぼしています。
この影響はアジア市場にも拡大し、日本においても例外なく価格が上昇しています。

さらに日本のエネルギー構成のうち、約30%を占める石炭の価格も上昇傾向にあります。
理由としては、世界最大の石炭輸出国であるインドネシアが、国内向けの供給が不足しているとして輸出を一時的に禁止したことが挙げられています。
ここまで全方位でエネルギー価格が値上げしていると、やはりため息しか出ないのが正直なところですね。

※追記(2022年2月27日)
2022年2月24日、ロシアのプーチン大統領はウクライナへの軍事作戦に踏み切り、これに対し現在ヨーロッパをはじめとした世界各国は経済制裁等のかたちで反対の意思を示しています。
軍事作戦が始まってしまったことによるエネルギー価格への影響は避けられないと考えられますが、今はそれよりも一刻も早く停戦し、ウクライナの人々はもちろん、今回の軍事作戦を望んでいなかったロシアの人々にも平穏な日々が訪れることを願ってやみません。

値上げによるダメージを少しでも減らすためには

残念ながら今後しばらくの間、エネルギー価格は高水準に留まりそうです。
値上げによるダメージを減らすために個人個人ができる対策としては、「エアコンの使用頻度を減らす」、「照明をこまめに消す」などがありますが、どれも劇的な変化を望めるかというとそうでもなく、むしろ真夏日や真冬日にエアコンの使用を我慢すると、体調を崩してしまうことになりかねません。

より明確な効果を求めたい場合は、「電力会社・ガス会社ごと見直す」というのもお勧めです。
日本では2016年4月から「電力の自由化」が、2017年4月からは「ガスの自由化」がスタートし、利用する電力会社およびガス会社を自由に選択できるようになっています。
電気代とガス代をなるべく抑えたい場合は、一括比較サイトなどで各会社の料金プランを見比べ、より安い方への乗り換えを検討してみてはいかがでしょうか。
上手に選べば、今までと同じ利用状況でも大幅に電気代とガス代を抑えることができます。

ただし注意すべきなのは、基本料金と従量料金の総額で安くなるサービスを利用することです。
たとえば、基本料金が安いA社と従量料金が安いB社では、利用状況によってお得になる会社は異なります。
キャンペーンなどに流されるのではなく、必ず自分の利用状況をよく確認したうえでプランを選ぶようにしましょう。

電力自由化については以下のコラムでも詳しく解説しているので、気になった方は是非チェックしてみてください。

新電力会社って何?従来の電力会社から乗り換えるメリット・デメリットとは?

また、世界情勢の影響による電気代の値上げに一喜一憂しないためには、太陽光発電システムで発電した電気を蓄電池に貯えて自家消費するというのも一つの方法です。
太陽光発電システムの導入には初期費用こそかかるものの、長い目で見れば電力会社で電気を購入するよりも電気代を安く抑えることが期待できます。

なお、当社は長年太陽光発電システムの販売・施工を行ってきた実績がありますので、太陽光発電システムおよび蓄電池の設置に興味がおありの方は、どうぞ当社までお気軽にお問い合わせください。

まとめ

電気代やガス代の値上げは日本だけで起こっていることではなく、世界中につながっている話だということが分かりましたね。
新型コロナウイルスの影響や国家間の対立など、さまざまな要因が複雑に絡み合っているため、残念ながら解決の見通しはまだまだ立たなそうです。

終わりの見えない新型コロナウイルスの感染拡大、ロシアによるウクライナ侵攻、公共料金や食料品の値上げによる家計へのダメージなど、何かと落ち込んでしまうニュースが多いこの頃ですが、まずは自分にできることから着手しつつ、前向きな気持ちで春を迎えたいものですね。

参考URL:NHKサクサク経済Q&A「電気料金なぜこんなに上がるの?」
参考URL:
テレ東BIZ中国“青空作戦”の裏で… 工場停止や失業…異常事態が発生
参考URL:NEWS PICKS「【3分解説】ロシアはウクライナに侵攻してしまうのか」

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